2017.12.18
骨にできる悪性腫瘍のなかで、最も有名な病気です(肉腫とは、広い意味の「がん」ですが、骨や筋肉・脂肪・神経・血管などに発生した悪性腫瘍を「肉腫」と言います)。発症頻度は、人口50万人あたりに1人とまれで、日本での年間発症数は約250例です。発症年齢は、10~20代の若年者に多いですが、60代以降の方もいます。また、他のがん治療で行われた放射線照射後に発症する二次性骨肉腫の存在も知られています。発生部位は、膝関節周囲や上腕骨近位に多いです。
診断はまず、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査によって骨に破壊性の病変があり、腫瘍性の骨形成を伴っていることを確認します(図1)。その後、他の骨腫瘍と鑑別するために生検(患部の一部を取って調べる検査)を行い、病理組織診断をつけて確定診断とします。
治療は、手術と化学療法が行われます。手術は、広範切除術と言って、腫瘍を周囲の健常な組織で包み一塊として摘出する切除を行います。まれですが、病的骨折例や発生部位・大きさによっては、切断術を選択せざるを得ない場合もあります。切除後の再建には、腫瘍用人工関節(小児ではオーダーメイドの伸長型人工関節)が多く使用されています(図2)。症例によっては、摘出した腫瘍骨に温熱処理や液体窒素処理を行い、自家骨移植※と共に体内に戻して内固定する生物学的再建も行われています。
骨肉腫は、昔は不治の病などと言われていましたが、現在では化学療法(抗がん剤治療)によって劇的に生命予後が改善し、初診時に遠隔転移が無い症例では、5年生存率は70%を超えるまでになっています。
※自家骨移植: 患者さんの腓骨や腸骨など、自分の骨から採取した骨を移植する方法
図1: 骨肉腫(膝関節)
図2: 腫瘍用人工膝関節置換
※骨膜反応: 腫瘍が骨の表面を覆っている骨膜を押し上げたときに生じるもの
若い年齢に生じることが多い病気です。症状として、発症部位の腫れと痛みを伴いますが、10代に多いということもあり、「成長痛」と自己判断している場合もあります。明らかな怪我をしていないのに、1ヵ月以上痛みが引かない場合や腫れがある場合は、自然に治るだろうと思わずに一度病院で診察してもらうことをお勧めします。
発症の原因は、現在でも不明です。骨が成長する時期によく発症しますが、高齢者での発症や、放射線照射骨の二次性発症もあり、メカニズムが複雑です。原因遺伝子はまだ特定されていませんが、一部の症例では神経芽腫やLi-Fraumeni(リ・フラウメニ)症候群と関係があると言われています。
解説:竹内 克仁
済生会横浜市南部病院
整形外科部長
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