社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

不安・抑うつ 不安・抑うつ

不安とは、対象や根拠がはっきりしないままに漠然とした恐れを抱くことです。健康な人でも不安を感じると動悸、発汗、息切れなどが起こるものですが、過度の不安が何度も繰り返し起こり、生活に支障をきたすようなら、病的な不安と考えられます。

抑うつとは、気分がふさぎ込む憂うつな状態のことです。健康な人でもさまざまな理由で抑うつ気味にはなりますが、多くの場合は生活に大きな支障はきたさず、数日~1週間ほどで気持ちが上向きになってきます。

不安や抑うつによりほとんど1日中ひどい苦痛を感じ、仕事や学業、家事などに差し支えがある状態が2週間以上続く場合は、自分一人で抱え込もうとせず、精神科や心療内科を受診してください。

どんな人に、どんなときに現れるか

不安や抑うつは誰しもが日常的に体験するものです。ただし、その程度がひどかったり、期間が長かったりする場合は、こころの病気にかかっているかもしれません。

抑うつ症状を起こす代表的な病気はうつ病です。一生のうちにうつ病を発症する人は16人に1人ほどといわれており、決してまれな病気ではありません。こころが疲弊してエネルギー不足になっている状態ですので、無理をせずに休養することが一番の治療となります。
うつ病には男性より女性の方が2倍多くかかりやすいことが知られています。大人だけでなく、子どもや高齢者も発症します。子どもの場合はイライラ、不安定な情動、問題行動などが前面に出ることがあり、高齢者の場合は認知症の初期と間違えられたりすることもあります。妊産婦が出産後にかかりやすい産後うつも要注意です。

身体疾患はうつ病の発症や増悪の危険因子ですが、うつ病そのものがまた身体疾患の増悪因子でもあります。つまり、うつ病の存在により、悪循環に入ることがありますので、身体疾患を伴う場合には、特に注意が必要です。

また、過度の不安が続く場合は不安症の可能性があります。不安を感じるシチュエーションや行動などによって、パニック障害広場恐怖症社交不安障害、強迫症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、離人症、摂食障害など多数あります。

なお、このようなこころのSOSサインに気付かないままに、肩こりや腰痛、喉のつかえ感、身体の重さなどの不快な身体の症状だけを自覚している場合もあります。

いずれにせよ、病的な不安や抑うつに悩まされているときは、専門家による適切なサポートを受けることが大事です。また、家族や周囲の人の理解や支援も欠かせません。

どんな病気が関係しているか

「不安・抑うつ」の症状が現れる主な病気の中で、発症頻度の高いもの、特徴的なもの、注意が必要なものをとりあげました。病気についてさらに知りたい場合はリンク先をご参照ください。

症状とその特徴

説明

疑われる主な病気

・抑うつ気分

・興味や喜びの喪失

・気力の減退

・食欲、睡眠などの変化

・絶望感や無価値感など

・身体の痛みや重さ

こころの症状がほぼ毎日、2週間以上続き、生活に支障をきたす。身体の症状が出ることもある

うつ病

・抑うつ状態と躁状態を年単位で繰り返す

・躁状態を自覚していない

躁状態とは周囲に迷惑をかけるほどのハイな状態のこと。うつや躁でないときは正常で、本人はうつ病だと思っていることが多い

双極性障害(躁うつ病)

・突然の強い不安(動悸、息切れなど)(パニック発作)

 

発作を繰り返すと、発作そのものに対する不安(予期不安)や特定の状況を避けようとする(回避行動)

パニック障害

・人前に出る状況で自分が失敗することへの強い不安や緊張を感じる

 

回避行動により日常生活に差し支える。性格の問題とされがちだが、脳神経の不具合が原因のことも

社交不安障害(あがり症)

チェックポイント

(1)次のような症状の有無を確認する

  • 不安や抑うつはいつから始まったか、どれだけ続いているか
  • 1日のうち不安や抑うつに悩む時間はどのくらいか
  • 他人や活動への興味はあるか
  • 喜びを感じることはあるか
  • 体重の変化はあるか、その期間はどれくらいか
  • 食欲はあるか
  • 不眠もしくは寝すぎではないか
  • 疲れやすさはないか
  • 気力はあるか
  • ボーっとするか、集中力は続くか
  • 自分は無価値であると感じるか、絶望感があるか
  • 死について考えることがあるか
  • 身体の痛みや不調を感じているか

(2)次のような環境を確認する

  • 特定のシチュエーションで症状が誘発されるか
  • 生活にどの程度の支障が起きているか
  • 周囲の人に症状を指摘されたことはあるか
  • 症状が出るのを恐れるあまり、避けていることがあるか
  • 現在、患っている病気はあるか
  • 飲んでいる薬やサプリメントの種類
  • 生活の変化(ライフイベント)や精神的ストレスなどがあったか


泉 学

解説:泉 学
済生会宇都宮病院
内科系診療部長補佐・総合診療科 主任診療科長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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