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2022.11.30
広場恐怖症は、特定の場所(広場に限らない)で、強い恐怖や不安を感じてしまい、日常生活に支障をきたす病気です。
明らかな原因は分かっていません。パニック障害を合併する人が多くみられます。
以下の5つのうち2つ(またはそれ以上)の場面で、強い恐怖や不安を感じます。
① 公共交通機関の利用(例:自動車、バス、列車、船、航空機)
② 広い場所にいること(例:駐車場、市場)
③ 囲まれた場所にいること(例:店、劇場、映画館)
④ 列に並ぶまたは人込みの中にいること
⑤ 家の外に1人でいること
上記の状況でパニック様の症状が起きたときに、そこから逃げられず、助けが得られないかもしれないと考え、過度な不安を持ち、これらの状況を回避したり、誰かに付き添ってもらうようになります。こうした状況が6カ月以上持続し、日常生活や就労・就学に支障をきたします。
上記の症状によって診断を行ないます。その際、症状が他の精神疾患や身体疾患によるものでないかの見極めが必要となるため、採血などの身体的な検査や診察をすることがあります。
薬物療法と精神療法を併用することが多いです。
●薬物療法
抗うつ薬として使用される、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などを使用します。
根本の不安症状にはSSRIやSNRI、パニック症状には即効性のある抗不安薬を使用します。
●精神療法
「認知行動療法」と「曝露反応妨害法」という治療法が有効といわれています。
前者は、ある出来事に対する自分自身の認知(考え方、受け止め方)や行動の特徴を認識し、修正することで、不安などの軽減を図る方法です。後者は、前者の一環として、不安が生じやすい状況に自分を徐々に曝露(さらすこと)させ、不安が軽減するまで繰り返す方法です。その際に不安の度合いを数値化して記録し、自覚しやすいようにします。最初は不安の軽い状況から開始し、徐々に不安を感じやすい場面に向き合うようにします。
医学解説の「広場恐怖症の症状」の項で取り上げた5つの症状のうち2つ以上が当てはまり、社会生活に支障がある場合は、速やかに精神科や心療内科を受診して相談するようにしましょう。
生活習慣を整えたり、ストレスを軽減したりするように努めることが、予防につながると考えられます。アルコールやカフェインなどの過度な摂取も注意が必要です。まずは健康的な生活習慣を心がけましょう。
なお、すでに症状がある人の場合、苦手な場面を回避することで一見症状はみられなくなりますが、不安感が強まって生活が制限されてしまうこともあります。そんなときには専門医を受診するなど適切な対応が必要です。
参考:アメリカ精神医学会「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」
解説:古関 麻衣子
千葉県済生会習志野病院
精神科
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