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2023.03.22
ハンチントン病は遺伝性の病気で、舞踏運動(顔や手足の素早い不規則な運動)などの不随意運動や、情動不安定などの精神症状、認知症などの症状がみられます。国内の有病率は10万人あたり0.7人と非常にまれな病気です。
最初に医学的な報告を行なったアメリカのジョージ・ハンチントン医師の名前にちなんで、病名が付けられました。
ハンチントン病は、両親から受け継いだ対の常染色体の遺伝子のうち片方に異常があれば発症する「常染色体優性遺伝病」で、異常遺伝子が子どもに遺伝する確率は50%です。また、徐々に症状が進んでいく進行性の病気です。
国が定める「指定難病」の一つに定められています。
ハンチントン病は、タンパク質を作り出す「HTT遺伝子」の異常が原因です。
人体の設計図であるDNA (デオキシリボ核酸)を構成する化合物(塩基)はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類から成り、その並び方を「塩基配列」と呼びます。
このうちC・A・Gの3種類の塩基が繰り返し配列されることを「CAGリピート」といいますが、HTT遺伝子の異常により40回以上のCAGリピートが起こることでハンチントン病を発症します(36回以上のCAGリピートで発症の可能性があるといわれています)。
CAGリピートの回数は世代を経るごとに増加し、その結果としてハンチントン病の発症は若年化していきます。
発症早期から姿勢の維持など同じ動作を続けることが難しくなり、物を落としたり転びやすくなったりする運動症状がみられます。発症して数年が経過すると、手先が不規則に勝手に動いたり顔をしかめたりする舞踏運動がみられることもあります。
精神症状は運動症状が出る前に現れることがあります。精神症状では情動不安定による性格変化や不眠、うつ症状もみられます。認知症の症状はハンチントン病がかなり進行した段階で現れ、自発性が著しく低下することもあります。
概ね全経過は15~20年で、感染症で亡くなる傾向にあります。
患者さんの家族歴から疑われることが多いです。検査は専門医による神経学的診察、血液検査、頭部MRIなどを行なって診断します。頭部MRIではハンチントン病の患者さんは脳の尾状核と呼ばれる部位に萎縮がみられます。
また、特定の染色体や遺伝子に異常がないかを調べる遺伝学的検査を行なうこともあります。
今のところ、ハンチントン病の進行を抑制したり、完全に治したりできる治療はありません。ただ、運動症状や精神症状などを緩和する上で内服薬が効くことがあります。
舞踏運動だけがみられる場合は、脳深部刺激療法(電極を挿入し、電気刺激を行なう治療法)も考慮されます。
家族に同じ病気の人がいて、運動の持続困難や不随意運動、情緒不安定などの精神症状がある場合はハンチントン病を疑います。
発症していなくても遺伝学的検査を行なうことは可能です。ただ、検査の際は遺伝外来を設けている専門医療機関を受診し、カウンセリングをしっかりと受ける必要があります。
残念ながら早期に発見しても予後は変わりませんが、指定難病として申請を行なうことで医療費の自己負担が軽減されます。
残念ながら、現時点でハンチントン病を予防する方法は分かっていません。
医学解説の「ハンチントン病の症状」で記したように、同じ動作を続けることが難しくなったり、転びやすくなったりするなど発症早期の症状がみられたら、すぐに専門医を受診しましょう。
解説:鳥飼 裕子
神奈川県病院
脳神経内科
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