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2013.06.10
認知症は、さまざまな疾患で脳が変化することによって起こります。特に多いのは、アルツハイマー型認知症(認知症全体の50~60%)、脳血管性認知症(30%)、レビー小体型認知症(10%)です。
アルツハイマー型認知症
脳全体が少しずつ萎縮する病気です。特に、記憶を司る海馬という部位が早期に萎縮するため、記憶記銘障害、見当識障害で発症することが多いです。徐々に進行し、幻覚や妄想、特に「もの盗られ妄想」がよく見られるようになります。近年、症状の進行を抑制する薬が相次いで発売されています。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血によって、脳の一部に障害が生じて発症します。できることとできないことがある「まだら」状態になったり、手足に麻痺が生じたりすることが特徴です。気づかないうちに小さい脳梗塞が複数発生する「多発性脳梗塞」では、症状が階段状に進行することもあります。
レビー小体型認知症
進行性の認知症を基本に、はっきりしているときとぼーっとしているときがあるという認知機能の変動、ありありとした幻視、筋肉が硬くなったり動作が遅くなったりするパーキンソン症状がみられます。睡眠中の行動異常が生じることもあります。
その他の認知症
慢性硬膜下血腫、栄養障害、脳炎、甲状腺機能低下症などでも認知症をきたすことがあります。これらの疾患から起きる認知症は、元の疾患を治療することで治療できる場合が少なくありません。
認知症の症状には、脳の病変によって直接的に生じる「中核症状」と、それによって日常生活や周囲の人とのかかわりに問題が生じて起こる「周辺症状」があります。
「中核症状」には、記憶記銘障害、見当識障害、判断力の障害などがあります。例えば、何度も同じことを言ったり聞いたりする、大切な物をなくしたり置き忘れたりする、火の消し忘れが多くなる、今は何月か、どこにいるのか見当がつかなくなる、簡単な計算の間違いが多くなる、今まで好きだったものに興味・関心がなくなるなどです。
一方、「周辺症状」には、幻覚や妄想、徘徊、介護への抵抗、興奮、せん妄などがあります。周辺症状の出方は個人差が大きいですが、いずれも対応が困難なことが多く、介護面で問題になります。
・自覚のない物忘れ
・日常生活に問題を生じる物忘れ
物忘れには、病的な物忘れ(記憶記銘障害)と、健康な人でも起こる物忘れがあります。どちらであるかを区別することが大切です。
病的な物忘れを区別するポイントとして、(1)症状を全く自覚していない、もしくは多少の自覚はあるがあまり深刻に考えていない、(2)徐々に進行し、日常生活に支障をきたす、という2点が挙げられます。
健康な人にも物忘れは見られますが、この場合は物忘れの自覚があり、思考力や判断力の低下は見られませんし、日常生活にも支障は生じません。
心配な方、気がかりな方は神経内科の受診をお勧めします。
認知症は誰にでも起こりうる病気です。
現在65歳以上の高齢者のうち、認知症の方は推計15%で、2012年の時点で462万人にのぼることが厚生労働省研究班の調査でわかりました。また、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる「予備軍」が約400万人いることもわかりました。
認知症にならないためにはどうすればよいのでしょうか。
以下のような「認知症予防のための3か条」が提唱されています。生活を改善し、将来のリスクを軽減することが大切です。
1 生活習慣病の予防・治療
2 適度な運動と健康的なバランスのとれた食生活
3 脳の活性化
解説:本田 耕一
山形済生病院
内科診療部長
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