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2015.03.25
脂質異常症とは、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪の値が異常となる(多くの場合高い)病気のことです。
本来、血液中のコレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料となり、中性脂肪は貯蔵用のエネルギーや内臓の固定、保温などに用いられ、どちらも人の体にとって欠かせないものです。しかし、第二次世界大戦後の日本では、飢餓が珍しいものとなり、食事が欧米化し、交通機関の発達で運動不足が生じるようになりました。近年の脂質異常症の増加には、遺伝的素因に加えて、こうした食習慣や生活習慣の変化が関与していると考えられます。また、平均寿命が延び、これまでは問題になりにくかった「脂質異常症による合併症」が増えてきたことで、注目されるようになっています。
脂質異常症自体では、多くの場合症状はありません。しかし、その状態が続くことで、動脈硬化症をきたし、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)や、脳梗塞などの合併症を生じるリスクが高まります。脂質異常症を治療する目的は、そのような合併症を起こさないようにすることにあります。
なお、以前は「高脂血症」という名称で知られていましたが、HDL(いわゆる「善玉」)コレステロール値が低い場合も問題となる病気のため、最近、「脂質異常症」と呼ばれるようになりました。
治療としては、食事療法・運動療法・薬物療法が中心となります。
とりわけ、中性脂肪(トリグリセライド)値が高い場合や、HDLコレステロール値が低い場合については、食事療法・運動療法である程度の改善が期待できます。しかし、それで十分ではない場合には、薬物療法での治療となります。
一方、LDL(いわゆる「悪玉」)コレステロール値が高い場合、コレステロールは食事から体に取り込まれる以外に、肝臓など体内で合成されるケースも多いため、食事療法で改善しないこともあり、その際は、薬物療法が必須となります。
「コレステロールの薬は、一度始めるとやめられなくなるから心配」とおっしゃる人が多いですが、薬の中毒になってしまうわけではなく、薬をやめるとコレステロール値が元に戻りやすいので、継続して内服していただくことになります。体質が変化した場合などには、処方薬を変更したり、終了したりすることもあります。
多くの場合、脂質異常症には自覚症状がありません。そのため、定期健診で血液検査を受けることが、早期発見のポイントです。
血液検査において、特に中性脂肪は食事の影響を受けるため、採血は早朝空腹時に行なう必要があります。採血の前日は禁酒とし、夕食は20時までに済ませ、当日の検査までは、水かお茶以外は口にしないでください。
診断については、脂質異常症のうち、LDL(いわゆる「悪玉」)コレステロールが140mg/dL以上なら「高LDLコレステロール血症」、HDL(いわゆる「善玉」)コレステロールが40mg/dL未満なら「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上なら「高トリグリセライド血症」と診断します。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血による数値)
ちなみに、日本人でのメタボリックシンドロームは、腹囲が男性で85cm以上、女性では90cm以上かつ、①「低HDLコレステロール血症」または「高トリグリセライド血症」と診断されている、②血圧130/85mmHg以上、③空腹時血糖110mg/dL以上、この3項目中、2項目以上を満たした場合に診断します。
メタボリックシンドロームの診断基準
脂質異常症は、遺伝的に起こりやすい体質の人がいます。血族に、脂質異常症や合併症としての狭心症、脳梗塞などを(特に、若いときに)生じた人がいる場合は、そのような体質を持っている可能性がありますので、定期健診をきちんと受けるようにしましょう。また、最近体重が増えてきた人、アルコールをたくさん飲む人、ステロイド薬や経口避妊薬を内服している人も脂質異常症になりやすいタイプといえます。
予防には、バランスの良い食事と、ウォーキングやサイクリングといった有酸素運動が効果的です。
解説:鯉江 基哉
野江病院
糖尿病・内分泌内科 副部長/総合内科 副部長
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