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2021.06.23
脳出血は脳の中を走る細い動脈が突然破れることにより、脳の中で出血する病気です。
同じく脳の血管が破れて起こる病気にくも膜下出血があります。くも膜下出血は、くも膜の内側の液体がたまっている「くも膜下腔」という脳の表面のスペースで出血し、多くは脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう=脳の動脈がこぶ状にふくれたもの)が破裂します。
一方の脳出血は、長年の高血圧や動脈硬化で脳の中の細い動脈がもろくなり、破れて出血してしまうことが主な原因です。流れ出た血液が、脳内の神経細胞を圧迫し障害を引き起こします。高齢者では、脳アミロイド血管症(脳血管に異常なたんぱく質が沈着する病気)によって血管がもろくなって破れ、脳出血を起こします。このほかに、頭部への強い打撃など外傷性の要因から、脳出血が起こることもあります。
脳の血管が破れて起こる脳出血とくも膜下出血、さらに脳の血管が詰まって起こる脳梗塞を合わせて、脳卒中と呼びます。
前触れなく突然発症することが特徴です。出血の場所、出血量により症状や重症度が変わります。典型的な症状として、半身の運動麻痺や感覚障害が出現します。麻痺のため顔のゆがみが出ることもあります。また、しゃべりにくかったり、言葉が出にくかったりする症状が現れることがあります。出血がひどい場合は意識障害を引き起こし、程度によっては命に関わります。
脳梗塞と症状が似ており、少しずつ悪化するのではなく短時間で症状が変化するケースが多いです。一方、くも膜下出血はバットでいきなり後ろから殴られたような、突然の激しい頭痛が特徴です。
頭部CT検査によって、脳内の出血の場所や程度を診断することができます。脳卒中は時間を争う病気ですので、症状があったらすぐに病院を受診してください。
出血の場所や出血量により治療法が変わります。出血自体は数週間で吸収されてなくなりますので、多くの場合は脳の腫れを取る薬を使ったり、血圧をコントロールしたりしながらリハビリテーションを行ないます。
出血が多く脳を圧迫して症状を悪くしている場合には、手術を行ないます。手術には全身麻酔で開頭して血腫を取る方法、血腫に針を刺して吸引する方法、内視鏡を挿入して血腫を取る方法などがあります。
脳出血を起こした人は多くの場合、半身麻痺などの後遺症があります。その後遺症を少なくするためには、発症後早い段階からリハビリテーションを行なう必要があります。
脳出血を含む脳卒中は早期発見、早期治療が重要な病気です。下記のテストで顔、腕、言葉の三つを検査し、一つでも当てはまる場合は脳卒中が疑われます。
Face (顔の麻痺):うまく笑顔が作れますか?
→顔の片側が下がる、ゆがみがあるなどは、顔の麻痺が疑われます。
Arm (腕の麻痺):両腕を上げたままキープできますか?
→片腕に力が入らない、キープできずに下がるときは、腕の麻痺が疑われます。
Speech (言葉の障害):短い文がいつも通り話せますか?
→言葉が出てこない、ろれつが回らないときは、言葉の障害が疑われます。
これらの症状に気がついたら、Time(発症時刻)を確認してすぐに救急車を呼んでください。これらの頭文字をとってFASTと覚えてください。
そのほか、体験したことのない激しい頭痛がある、片方の目が見えなくなる、物が二重に見える、視野が欠ける、身体がふらついてバランスが取れない、歩けないなどの症状がある場合も脳卒中の可能性があります。様子を見たりせずにすぐに救急車を呼んでください。
脳出血の最大の原因は、高血圧です。高血圧は生活習慣病の一つで、塩分の取りすぎ、喫煙、過度の飲酒、運動不足、ストレス、肥満などが原因になり得ます。これらのことに注意をしながら生活をすることが、脳出血の予防につながります。
また、脳卒中の予防には、高血圧のほかに高脂血症(脂質異常症)、糖尿病の治療が重要です。これらの生活習慣病が見つかったら、医師の指示にしたがってしっかり治療しましょう。
解説:河野 隆幸
福岡総合病院
脳神経外科 主任部長
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