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2021.09.01
血小板は血液に含まれる細胞成分の一つで、出血を止める役割を持ちます。特発性血小板減少性紫斑病は血小板に対する自己抗体(自分の細胞や組織を抗原と見なして反応する抗体)ができ、脾臓で血小板が破壊されることで血小板数が減少し、出血しやすくなる病気です。
6カ月以内に血小板数が回復する「急性型」と、6カ月以上血小板数の減少が続く「慢性型」があります。急性型は小児に多く、慢性型は成人に多い傾向があります。
手足の末梢に紫色の点状の皮疹(発疹)が多数現れるほか、鼻血が止まりにくい、口の中に血豆ができる、ぶつけた覚えがないのにあざができるといった症状がみられます。
女性の場合は生理の出血が多かったり止まりにくかったりすることがあります。
重篤な場合は脳出血などを起こすことがあります。
血小板数が10万/μL(マイクロリットル)未満に減少した場合はこの病気を疑います。
まずは血小板に対する抗体の有無を検査します。次に骨髄検査を行なって、血が作れないその他の病気ではないかを確認します。さらに、胃の中にピロリ菌がいる場合も血小板数が低下するため、ピロリ菌の有無ついても調べます。
ピロリ菌が胃に存在する場合は除菌療法を行ないます。この治療により半数以上の患者さんで血小板数が回復します。
ピロリ菌がいない場合、もしくは除菌療法が無効の場合は、副腎皮質ステロイドによる治療を行ないます。その際、血小板数と症状をみながら投与する薬剤の量を徐々に減らします。
副腎皮質ステロイドが無効な場合や、副作用などにより治療継続が困難な場合は、脾臓の摘出も検討します。
上記の治療でも治りにくいケースでは、血小板を増やす薬で継続的な内服治療を行ないます。薬には、経口薬のエルトロンボパグ(連日内服)と皮下注射剤であるロミプロスチム(週1回皮下注射)があります。これらは病気を治癒させる薬ではないため続ける必要があります。
また、緊急時の治療方法としては、免疫グロブリン(血液中にある抗体)を精製して作られた製剤を投与する免疫グロブリン大量療法があります。血小板を破壊する脾臓の働きを抑えて血小板を増やす効果があり、血小板数3万/μL以上の維持を目指します。効果は一過性のため、手術時、脾臓の摘出術前などに限ってこの治療を行ないます。
早期に発見するのは難しいですが、以下の症状が現れた場合は、かかりつけ医を受診してください。
・手足の末梢に紫色の点状の皮疹(発疹)が多数現れる
・鼻血が止まりにくい
・口の中に血豆ができる
・ぶつけた覚えがないのにあざができる
・生理の出血が多かったり止まりにくかったりする
残念ながら、発症を予防する方法はありません。症状に気づいたらすぐにかかりつけ医を受診することが大切です。
解説:竹内 隆浩
静岡済生会総合病院
血液内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。