社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2022.09.21

高次脳機能障害

higher brain dysfunction

解説:冨本 秀和 (明和病院 院長)

高次脳機能障害はこんな病気

高次脳機能障害は、病気やけがによって脳に損傷を負うことで脳機能に障害が出て、日常生活や社会生活に支障が生じる状態をいいます。
高次脳機能障害は、単純な知覚障害(痛みや感覚がないなど)や運動障害(手足を動かしにくいなど)ではなく、より高いレベルで、知覚と運動をつなぎ合わせて判断などを行なうネットワーク機能の異常です。「知覚」を例にとると、触っていることは分かるものの、触ったものが布か紙か分からない、といった状態です。

高次脳機能障害の症状

脳には、働きに対応したさまざまな領域(認知ドメイン)があり、損傷した部位によって注意障害、遂行機能障害、記憶障害、失語・失行・失認、社会的行動障害など、現れる症状が違います。例えば前頭葉の場合は注意障害や遂行機能障害、側頭葉の場合は記憶障害などが生じます。障害部位が脳の左右でも症状が異なり、左側では言語機能に、主に右側では空間認知機能に異常が現れます。

障害別に現れる症状の例
注意障害:ミスが多い、気が散って落ち着かない、作業を長く続けられない
遂行機能障害:計画を立てて物事を実行できない、臨機応変に対応できない、指示がないと行動できない
記憶障害:食べたものや置き場所を忘れる、何度も同じことをいう、新しいことを覚えられない
社会的行動障害すぐに怒る、暴力を振るう、こだわりが強くなる、意欲が低下する

高次脳機能障害の検査・診断

障害の有無を把握するために、認知機能を総合的に調べる簡易検査として、ミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を行ないます。さらに、脳の領域(認知ドメイン)ごとに機能を調べる神経心理検査を行ないます。
より詳細に調べるために頭部MRI検査やCT検査といった画像検査を行ない、脳の組織に異常があるかを確認します。画像検査で異常が見つからない場合に、脳の血流の変化が分かる脳血流シンチグラフィや、脳波検査などを行なうことで初めて異常が見つかることもあります。

高次脳機能障害の治療法

患者さんごとの障害に合わせて、認知機能訓練、認知行動療法などのリハビリテーション、環境調整を行ないます。
環境調整とは、患者さんが生活しやすいように家や職場を整えたり、家族や職場の人など患者さんに日常的に関わる人たちに障害について理解してもらったりすることで、互いにストレスの少ない状態で過ごせるようにすることです。

けがや病気の早い段階で、詳細な神経心理検査を行ない、微細な脳損傷を調べるために頭部MRI検査で高感度な撮像法(「T2強調画像」や「拡散強調画像」など)を実施することが重要です。

高次脳機能障害は、脳卒中(脳梗塞脳出血くも膜下出血)、頭のけが(外傷性脳損傷)、低酸素脳症、脳腫瘍脳炎などが原因で起こるので、これらの病気やけがを予防することが重要です。

解説:冨本 秀和

解説:冨本 秀和
明和病院
院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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