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2013.02.01
脳腫瘍は、頭蓋内(頭蓋骨の内側)に発生するすべての新生物(できもの)の総称です。したがって、脳の実質だけでなく、脳を包む膜(髄膜・硬膜)や脳に出入りする神経などさまざまな部分に発生する腫瘍をすべて含めて脳腫瘍と呼びます。一言で脳腫瘍といってもその種類は非常に多いのが特徴です。
脳腫瘍には、原発性と転移性があります。原発性の脳腫瘍には発生頻度の高いものから、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫があり、この4大腫瘍で脳腫瘍の約80%を占めます。脳は頭蓋骨や髄膜・硬膜によって密閉された状態が保たれているために、腫瘍自体の体積が増大することで頭蓋内圧が強まります。髄外発生の髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫は基本的に良性で、髄内発生の神経膠腫は基本的に悪性です。
脳腫瘍は、毎年約10万人に10人の割合で発生しています。脳腫瘍が発生する原因は分かっていません。
良性脳腫瘍の代表格が髄膜腫です。髄膜腫は髄膜・硬膜に発生します。成長はゆっくりで、症状が出やすい3cmほどの大きさになるのに約10年かかるといわれています。腫瘍が小さいうちは無症状で、大きくなってくると脳や神経を圧迫することによって症状が現れるようになります。最近は、脳ドックの普及によって、無症状でも偶然見つかることが少なくありません。40~60歳代で発生しやすく、女性の方が男性より1.7倍多くなっています。
1 頭痛、嘔吐(おうと)、視力障害、記憶力障害などの自覚症状
2 意識障害、眼球運動障害、運動麻痺、感覚、障害、失語症などの他覚症状
脳腫瘍は、なんらかの症状が現れたときには、腫瘍はすでにある程度の大きさに成長しているため、周囲の脳組織を圧迫して脳浮腫を引き起こしている場合が多く、頭蓋内圧亢進症状や局所神経症状などがよく見られます。
頭蓋内圧亢進に伴う自覚症状としては、頭痛、嘔吐、視力障害などがあります。頭痛は早朝に起こることが多く、吐き気を伴った嘔吐などが多く見られるのが特徴です。視力障害は、初期にはあまり自覚されませんが、一過性・反復性の視力障害として見られることが多いようです。頭蓋内圧亢進が続くと、視神経萎縮を起こし、失明することもあります。
また、意識障害や眼球運動障害など、他覚的な症状は周囲の人でも気がつくことができるかもしれません。頭蓋内圧亢進に伴って意識障害も進行し、延髄の呼吸中枢が障害を受けると脳死になることもあります。
脳腫瘍の発生部位によって、運動麻痺、感覚障害、しびれ、失語症、記憶力障害、視野欠損、難聴、めまい、ふらつきなどの局所神経症状が現れます。記憶力障害が進行したために認知症と間違われることもあります。
脳皮質に腫瘍ができると、痙攣発作を起こすこともしばしば見られます。脳浮腫が強く、頭蓋内圧が強まって意識障害や痙攣を伴う場合は緊急処置が必要です。
脳腫瘍が疑われたら、すぐ病院で診察を受けることが大切です。
脳腫瘍の診断はCTやMRIで行われます。造影剤を静脈内注射して撮影する造影CTや造影RI、脳血管撮影などによってほぼ診断が確定されます。
脳腫瘍の症状は脳梗塞と似ているので注意が必要です。しかし、例えば頭痛は脳腫瘍の場合はだんだんひどくなっていきますが、脳梗塞の場合、頭痛が起きることはそれほど多くありません。くも膜下出血の場合は、激しい頭痛が突然襲ってきます。
脳腫瘍の治療は、手術による摘出が有効です。特に髄膜腫に対しては、薬による治療法はないため、小さくて無症状な腫瘍については経過観察が原則です。また、大きな腫瘍になった場合や、腫瘍が頭蓋底部や、近くに太い血管、神経などがある場所にできた場合は患部をすべて摘出することができません。そういったケースでは定位放射線治療(リニアック、ガンマナイフ、サイバーナイフなど)が手術後に行われる場合があります。
けいれん発作に対しては抗てんかん薬が使われます。
脳腫瘍は、良性腫瘍で全摘出できても10年単位でみると、約10%の患者さんで再発が見られたりするため、1年~数年おきに外来でMRIの検査を受けることが大切です。
解説:淺田 英穂
東京都済生会中央病院
脳神経外科部長
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