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2023.09.27
神経膠腫(しんけいこうしゅ)は脳腫瘍の一種で、「グリオーマ」とも呼ばれます。
脳の神経細胞は、さまざまな種類の細胞に構造を支えられたり、栄養をもらったりして、複雑なネットワークを形成しています。このように神経細胞をサポートするさまざまな細胞のグループを「神経膠細胞」といい、この細胞が腫瘍化したものが神経膠腫です。
神経膠細胞にはいろいろな種類があるため、どの細胞が腫瘍になったのか、どのような遺伝子変化が起こって腫瘍になったのかなどによって、病気の経過や好発年齢(神経膠腫にかかりやすい年齢)、治療法なども異なります。
特徴的な症状はあまりなく、手足が麻痺する、言葉が出ない、認知機能が低下するなど、腫瘍ができた場所によって症状もさまざまです。また、脳の局所症状だけでなく、頭痛やてんかんがみられることも少なくありません。
てんかんのように突然起こる症状も一部にありますが、多くは突然発症するのではなく、徐々に症状がひどくなる傾向にあります。
最初にCTやMRIなどの頭部画像検査を行ないます。ただ、造影剤を使わない単純CTや単純MRIでは、神経膠腫の種類や、他の脳腫瘍や変性疾患との区別がつかないことも少なくありません。そのため、必要に応じて造影剤を使用したり、核医学検査(放射性医薬品を体内に投与して病気の診断をする検査)を行なったりして、可能性のある病気を絞り込んでいきます。
画像検査だけである程度判断が可能な神経膠腫もありますが、最終的には手術で組織を取って診断すること(組織診断)が多いです。組織を取るためには、全身麻酔で脳の手術を行ないます。いずれの場合でも、神経膠腫について十分な治療経験を持つ医師と、慎重に検査を検討する必要があります。
神経膠腫は、手術や放射線治療、化学療法などをできる限り行なっても平均生存期間が2年に満たないものから、特に治療を必要としないものまで存在するため、一概に治療法を論じるのは難しいです。とはいえ、多くの神経膠腫は手術でできるだけ多く摘出した方がよいとされています。
しかし、神経膠腫は脳に染みこむような広がり方をするため、多く摘出するということは、それだけ脳を多く摘出することになります。どこまで摘出すべきかについては十分に検討が必要です。
摘出後は、組織診断の結果や腫瘍の遺伝子変異の有無を確認後、化学療法(薬物療法)の種類などが検討されます。一方で、手術ができない場所に腫瘍があったり、手術を必要としない神経膠腫もあるため、しっかりと検討した上で治療を行なうことが大切です。
神経膠腫はゆっくりと進行することが多いため、初期症状を早期に発見することが重要です。脳の局所症状には以下のようなものがあります。何となくおかしいと感じた時点で、早めの受診をお勧めします。
・運動麻痺
・感覚障害
・言葉が出ない
・記憶力障害
・物が二重に見える(複視)
・物を落としやすくなった
・歩くときに何となくふらつく
一方、脳の局所症状はほとんど出ずに、腫瘍がかなり大きくなってから頭痛や嘔吐などの症状が現れることもあります。脳腫瘍による頭痛や吐き気は、朝方に起こることが多いとされています。
ただ、頭痛などの症状は脳腫瘍に限らずいろいろな病気で起こるほか、もともと頭痛持ちという人も少なくありません。適切な検査を受けることなく頭痛を鎮痛薬などでやり過ごすことで、診断が遅れることがあります。「今まで頭痛はなかったのに急に起こるようになった」「今までと違う頭痛が起こるようになった」といった場合は、早めに専門医を受診しましょう。
残念ながら神経膠腫の予防法は特にありません。
神経膠腫など腫瘍ができやすい遺伝性疾患が一部に存在しますが、多くの場合、遺伝的要素はほぼ関係ないとされています。特定の生活習慣や嗜好品で神経膠腫ができやすくなるなどの明確な関連性も明らかになっていません。ただ、まれに若年期に受けた頭部の放射線治療の影響で神経膠腫が発生しやすくなることが知られています。
解説:中島 慎治
日田病院
脳神経外科 部長
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