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2014.12.03
「食事中、急に右手に力が入らなくなって箸が使えなくなり、立ち上がろうとしたら右足にも力が入らなかった。しかし、5分間位じっとしていたら症状が消えて元通りに戻った」これが、典型的な一過性脳虚血発作のパターンです。一過性脳虚血発作は、TIA(ティー・アイ・エー)とも呼ばれます。症状は、半身の脱力、言葉が出ない(失語症)、呂律が回らない、半身のしびれなどさまざまです。
一過性脳虚血発作とは、一時的に脳の動脈が詰まって脳梗塞症状が出たものの、早い時点で再度動脈が開通して血液が流れ始め、症状が消える現象を指します。しかし、これは原因を残したまま、運よく一時的に血液の流れが再開しただけです。
発症の原因は大きく2つに分かれます。1つ目は、心房細動(不整脈の一種)などによって心臓の中に血栓(血液の塊)ができ、脳の血管に運ばれて一時的に詰まったものの、血栓が自然に溶けて血管が再開通する場合です(図1)。2つ目は、脳の動脈が狭くなった状態(狭窄)で、血圧低下や脱水が一時的に起こり、狭窄した先へ十分に血液が運ばれなくなるために症状が現れますが、血圧などが元通りになって症状が消える、という場合です(図2)。
原因がどちらであるかによって、使用する薬の種類は異なります。
「症状が消えて元に戻ったから」とそのまま放っておくと、次は本物の脳梗塞の発作を起こす場合が少なくありません。特に、一過性脳虚血発作が起こってから48時間以内に、脳梗塞を発症しやすいことが分かっています。したがって、一過性脳虚血発作は、脳梗塞の警告サインだと認識してください。
医学解説の項目でも挙げたように、下記が一過性脳虚血発作の典型的な症状です。
・半身の脱力
・言葉が出ない(失語症)
・呂律が回らない
・半身のしびれ など
一過性脳虚血発作が起こったら、大至急、脳神経外科または神経内科のある病院を受診してください。症状が治まったとしても、それは一時的なもので、原因が解決されたわけではありません。大切なことは、「症状が戻ったからもう少し様子を見よう」などと思わないで、一刻も早く病院を受診することです。
一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告サインです。そのため、一過性脳虚血発作が起こった時点で、適切な治療を受けることが脳梗塞の予防につながります。症状が現れたら、自己判断をせず、すぐに病院を受診するようにしましょう。
また、一過性脳虚血発作を防ぐためには、脳梗塞の予防に努めることが重要です。動脈硬化の原因である高血圧、脂質異常症、糖尿病の方や心房細動の恐れがある方は、医師の指示にしたがって治療を受けましょう。
解説:久保 道也
富山病院
脳卒中センター部長
医師臨床研修担当部長
脳神経外科主任部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。