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2015.12.25
ラクナ梗塞とは脳梗塞の病型の一つです。脳梗塞には二つのタイプがあり、一つは脳の血管が動脈硬化によって狭くなることで起きる「脳血栓」で、もう一つは心臓にできた血栓が脳の血管に流れて詰まる「脳塞栓」です。このうち、脳血栓の中でも脳の深い部分を流れている細い血管が詰まってしまうことで起きる脳梗塞を「ラクナ梗塞」といいます。”ラクナ”とはラテン語で”小さなくぼみ”という意味です。
脳の血管は太い血管から細い血管へと枝分かれしています。主幹脳動脈から枝分かれして、脳の深い部分に酸素や栄養を送り届けている直径100~300μm程度の細い血管を「穿通枝(せんつうし)」といいます。この穿通枝が詰まると脳の深い部分に血液が行き渡らなくなり、脳細胞が壊死してラクナ梗塞を起こします。穿通枝が詰まったときに壊死におちいる範囲は15mm未満とされています。
ラクナ梗塞
一般的な脳梗塞と同様、半身の脱力(運動麻痺)、半身のしびれ(感覚障害)、しゃべりにくさ(構音障害)が主な症状ですが、小さな脳梗塞なので症状が軽いこともあります。また、意識障害が起きることはありません。運動麻痺や感覚障害などの大きな症状がなくても、脳のいろいろな場所に再発を繰り返すと、認知症、言語障害、嚥下障害(ものが飲み込みにくくなる)の原因となることがあるので、注意が必要です。
また、脳細胞が壊死する範囲が小さいので症状が出ないこともあり、これを「無症候性脳梗塞」と呼びます。高齢者の場合、CTやMRIといった脳の検査で、無症候性脳梗塞が偶然発見されることも少なくありません。
手術が必要になることはなく、基本的に内科的治療を行ないます。主な治療には、血液の固まりができるのをおさえる薬(抗血栓薬)、脳細胞を保護する薬(脳保護薬)などが使われ、抗血栓薬には点滴薬と飲み薬があります。
発症して4~5時間以内、かつ脳がまだ壊死していない場合は、「t-PA」という血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)が使えるため、できるだけ早く病院を受診することが大切です。加えて、機能回復のためにリハビリテーションを行なうことも重要な治療の一つです。
・半身の脱力(運動麻痺)
・半身のしびれ(感覚障害)
・呂律が回らない(構音障害)
上記のような症状が急に起きることが、ラクナ梗塞の特徴です。
小さな脳梗塞なので症状は軽いこともありますが、このような症状が急に起きたときは、一刻も早く病院を受診してください。また、「一過性脳虚血発作(TIA)」といって、このような症状が数分から1時間程度で自然に治まることもありますが、これは脳梗塞の前ぶれであり本格的な脳梗塞を発症することがありますので、症状がよくなっても早期に病院を受診するようにしましょう。
ラクナ梗塞は動脈硬化により引き起こされるため、動脈硬化の原因となる生活習慣病(危険因子)の治療が最も効果的な予防法といえます。三大危険因子として「高血圧」「脂質異常症(高脂血症)」「糖尿病」があり、これらを悪化させる生活習慣として「喫煙」「大量の飲酒」「運動不足」「肥満」などが挙げられます。生活習慣病は自覚症状があまりないので、血圧測定や採血検査などをしないと分かりません。健康診断や医療機関の受診でこれらの生活習慣病を指摘された際には、塩分やカロリーを控えた食事療法、運動療法、場合によっては内服薬による薬物療法を行なう必要があります。
一度、ラクナ梗塞を発症した人の再発予防(二次予防といいます)のためには、血栓をできにくくする薬(抗血小板薬)が使われます。ラクナ梗塞は再発しやすい病気なので、抗血小板薬は医師の指示にしたがって規則正しく服用することが大事であり、自己判断で中断することは危険です。
解説:中垣 英明
福岡総合病院
神経内科 脳・血管内科部長
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