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2013.11.05
血圧とは、心臓が収縮したときに動脈を通じて送り出される血液を、身体が必要とする量だけ送るための圧力をいいます。これは家庭で使用する水道に例えれば、“水圧”に相当します。水道水を必要な量だけ確保するためには、一定程度の水圧が必要となり、水圧が低ければ十分な水は出てきません。各家庭で一斉に水を使用することを考え合わせると、水道の水圧が足りなければ、必要な水量が家庭に届かないということになります。これは血圧も同様で、必要な圧力がなければ十分な血液を身体の各部に配送できません。
一方、必要以上に高い血圧は、血管に余分な負担をかけることにつながります。高血圧とは、身体が必要とする以上の血圧が持続している状態をいいます。この状態が続くと、血液を運ぶパイプである動脈の血管壁が血液の圧力に耐えるため、次第に厚く、硬くなり、これにより動脈硬化を生じることになります。また、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症などを併発していると、さらに動脈硬化は進展します。動脈硬化が生じると、脳、心臓、腎臓、眼底などに障害を起こします。こうした合併症を標的臓器障害といいますが、高血圧は脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心不全、腎不全、眼底出血、閉塞性動脈硬化症などの命に関わる、あるいは日常生活に大きな支障をきたす病気になる危険性を高めます。
このように危険な病気である高血圧には通常、表面的な症状は現れません。これが「静かな殺し屋(サイレントキラー/silent killer)」と呼ばれるゆえんです。「頭痛症状が現れたことから高血圧が自覚できる」と勘違いしている人が時折いますが、これは逆で頭痛が起きることによって、血圧が高くなっている可能性があるのだと思われます。高血圧は自覚症状から診断できるものではありません。こうした理由から“自覚症状がない=高血圧ではない”ということもいえないのです。血圧測定をして初めて診断ができる病気だということを知っておきましょう。
現在、日本では成人のうち約4000万人が高血圧だといわれています。検診を受けていない方は、一度病院で検診を受けましょう。また、家庭用血圧計をお持ちの方は自宅で血圧を測定してみてください。
高血圧初期の段階では、血圧レベルが最大140mmHg、最少90mmHgを少し超えた程度なので、この時点での自覚症状は全くないといってもよいでしょう。医学解説の項で述べたとおり、頭痛がするとか、肩こりがひどいなどの症状があるために高血圧であると自覚する人がいますが、まず症状があって、次に血圧が上昇したと考えるべきです。また、特殊な状況下で血圧値が急に高くなることがありますが、そのときには頭痛をはじめとして、視力障害、意識障害などの症状を発症します(高血圧緊急症)。これ以外のケースで高血圧を早期発見することはできません。
では、どのようにして気をつければよいのでしょうか。まずは、医療施設で検診を受けて血圧を測定することが大切です。また、最近では、家庭用血圧計も広く普及しています。自動血圧計は地域の公民館やスポーツジムなど、いろいろな場所に設置されています。このように気軽かつ定期的に血圧を測定することが、高血圧の早期発見につながるでしょう。このとき、測定した血圧が140/90mmHgを超えていれば高血圧と診断できます。家庭用血圧計における高血圧の基準は135/85mmHg以上です。
特定健康診査(健診)では、メタボリック症候群の予防のために腹部肥満、血圧、耐糖能異常(糖尿病予備軍であるか)、脂質異常などがチェックされます。心血管疾患を予防するためにも、健診を進んで受けることをお勧めします。動脈硬化の危険因子であるこれらの異常を早く発見して対応することが、健康を守ることにつながります。 重症の臓器障害が起こってからあわてないように予防、早期発見、治療を心がけてください。
高血圧の予防には生活習慣を見直して、問題があればそれを修正することが大事であるといわれています。生活習慣の修正ポイントには次のようなものがあります。
1 食事における減塩を心がける。塩分摂取の目標量を1日6g未満とする
2 野菜・果物を積極的に摂取する。コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。魚(魚油)を積極的に摂取する
3 減量を行なう。適正体重の維持(BMIを25未満に)を心がける
4 運動をする。少し汗ばむ程度の運動を中心に、30分以上を目標にできれば毎日行なう
5 節酒を心がける。禁酒の必要はないが、1日の飲酒量を日本酒1合、ビール大瓶1本程度にとどめる
6 喫煙者は禁煙をする
上記の生活習慣の改善を複合的に行なっていくことが、何より有効であるとされています。これらの項目は高血圧の予防に限らず、糖尿病、脂質異常症などの予防にも効果的です。
高血圧予防には特に減塩が重要ですが、日本人成人の平均食塩摂取量は10g以上となっており、外食するときや包装食品を食べるときには塩分量に気をつけてください。
包装食品を食べるときには、栄養成分表示(表)があるものを選び、その中に含まれている食塩量を確認する習慣をつけましょう。このとき注意してもらいたいことは、栄養成分表示にはNa(ナトリウム)表示が義務づけられていて、食塩表示にはなっていないことです。一部の企業では「食塩相当量」を併記していますが、表示が『ナトリウム200mg/1食』のみとなっている場合は、食塩に換算する必要があり、“200mg×2.54(食塩相当量を求める値)÷1000=0.51g”といった食塩量を割り出す計算が必要です。
カップ麺等の栄養成分表示に『ナトリウム2.8g』と記載があれば、(2.8mg×2.54=)7.1gの食塩が入っていることになります。ナトリウムと食塩は違いますから、ナトリウムの量を食塩量と間違えないよう十分注意してください。
栄養成分表示は任意の表示であり、法律で義務づけられているものではありません。商品に表示しようとする場合には、カロリー、タンパク質、脂肪、炭水化物、ナトリウムの5項目をこの順番通りに必ず記載することになっています。表示のない食品はこれらの5項目の情報さえも知ることができませんので、こうした知識を持つ賢い消費者であることも大切です。
某カップ麺の栄養成分表示例。食塩は(2.0g×2.54=)5.1gとなります。
解説:松浦 秀夫
済生会呉病院
院長
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