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2014.09.10
動脈硬化の進展により、下肢(足)の動脈本幹が狭くなったり詰まったりして、その血管の支配領域である組織に十分な酸素が供給されなくなる病気です。近年、高齢化が急速に進行したことや、食生活を含めた生活様式の変化によって、患者数は確実に増加しています。ただし、道路と同様に、本幹(幹線道路)が閉塞しても迂回路が発達していれば、症状はあまり強く現れません。
特徴的な症状は、次の通りです。運動時には筋肉の酸素消費量が増加しますが、本幹や迂回路からの血流が不足して十分な酸素が供給されないことで、その領域に筋肉の痛み(多くはふくらはぎの痛み)が生じます。さらに、酸素不足が強くなると、筋肉以外の組織も障害を受け、じっとしていても足先が痛くなったり、皮膚が壊死してミイラ化したり、欠損して傷(潰瘍)を形成したりします。ひどくなると下肢を切断しなければならないケースも見られる病気です。
診断では、血流低下の程度を把握し、詰まった部位の確認を行います。足の血圧と腕の血圧の比を測定する方法は、客観的に血流低下の程度を評価する方法としてよく用いられます。閉塞部位を確認し、健常な血管がどこに残っているかを、造影CT検査や血管造影検査で明らかにした後に、治療法が選択されます。
治療は、血栓を作りにくくする薬剤(抗血小板剤)や血管拡張剤の内服が基本です。また、ある程度歩行が可能な軽症から中等症の人は、痛みが生じない程度の歩行運動を繰り返すことによって、歩行距離の延長が期待できます。強い歩行障害、安静時の痛み、潰瘍・壊疽(えそ)のある人には、できるだけ血行再建を行います。これには、風船(バルーン)や金属製の筒(ステント)をカテーテルで患部に入れて血管を拡張する血管内治療と、太い迂回路(バイパス)を手術で作成する治療があります。いずれも、新しい医療器具の開発や手技の上達により、以前に比べて治療効果が上がりました。
典型的な症状は、歩行時の筋肉痛です。多くはふくらはぎ、場合によっては太ももの外側やお尻が痛くなります。一定距離を歩くと、筋肉が張ったように痛むことが多く、立ったまま休息すると痛みが治まり、再び歩けるようになるのが特徴です。階段では、上りで症状が出る場合が多いです。じっとしていても痛みがあるような重症例では、特に寝そべると痛みが強くなり、不眠を訴えたり、座った状態でしか眠れなくなります。血流低下が原因でできた傷(潰瘍・壊疽)は足の指先やかかと、くるぶしなどによく生じます。さらに、乾燥して黒く変色することが多く見られ、激しい痛みを伴います。いずれにしても、動脈閉塞で足が痛む場合は、足の甲を通る動脈の脈が触れなくなってしまいます。
しびれは、閉塞性動脈硬化症の症状としてはあまり見られません。しかし、急激に激しい痛みを伴ってしびれや麻痺が強くなる場合は、動脈が急激に血栓で閉塞した可能性があるので、ただちに医療機関を受診してください。
一方、近年増加している糖尿病の患者さんが閉塞性動脈硬化症を合併した場合は、歩行時の筋肉痛を伴わないで、いきなり足に潰瘍・壊疽が生じて血流障害に気づくケースが増えています。糖尿病の患者さんは、痛みなどの症状がなくても、ときどき血流検査を受けるとよいでしょう。また、足に小さな傷ができたときには、早めに医師や看護師に相談してください。高齢者で歩けない人も、足の色が左右で大きく異なったり、傷が治らなかったり、指先が黒くなってきたという場合には、病院の受診をお勧めします。
全身の動脈硬化症に含まれる病気なので、一般的な動脈硬化の原因と考えられる生活習慣の改善が大切です。最も重要なのは、禁煙と糖尿病のコントロールです。喫煙と糖尿病は、それぞれ閉塞性動脈硬化症のリスクが通常の3~4倍になります。近年、医療機関には禁煙外来が設けられているところが多く、禁煙補助薬などを用いて禁煙率の向上が図られています。自分で禁煙が難しい方は利用するとよいでしょう。
高脂血症や高血圧も、閉塞性動脈硬化症の発症や重症化に関連すると言われているため、適切な治療が必要です。脳梗塞や狭心症、心筋梗塞など、他の動脈硬化疾患にかかったことがある人では、血栓予防の薬(抗血小板剤)の内服が、全身の動脈硬化の進行を抑制すると期待されています。1日30分程度のウォーキングなど、適度な有酸素運動をするのも、予防には有効と考えられています。
また、動脈閉塞があっても症状が重症化しないように、足のケアにも配慮するべきです。特に糖尿病の患者さんや高齢者の場合は、足に傷を作らないように、傷ができたらすぐに対処できるよう、本人だけでなく、家族や介助者も気をつける必要があります。できるだけ関節が固まらないようにストレッチ体操を行い、体位変換を定期的にするよう努め、深爪にならないよう気をつけましょう。さらに、タコや魚の目、靴擦れができないように、足に合った靴を選びましょう。
解説:福田 篤志
唐津病院
外科部長兼主幹
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