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2014.10.09
食道は口や喉と胃袋をつなぐ、長さが約25cmの管状の臓器を指します。食道がんとはこの食道の内側を覆っている扁平(へんぺい)上皮という粘膜から発生したがんです。
日本における食道がんの罹患率(病気にかかる確率)は、人口10万人あたり男性で1年間に十数人、女性で2~3人程度です。男性では60歳以降、女性では70歳以降に多く認められます。早期診断方法の開発、手術方法及び術後管理の進歩により、最近では食道がんの生存率は著しく向上しています。しかしながら、いまだに食道がんは治療の難しいがんといわれています。その理由として、以下のような食道の特性が挙げられます。
・周囲を、心臓、大血管、肺、気管などの命にかかわる重要な臓器に囲まれている
・胃など他の消化管と異なり、臓器を漿膜(しょうまく/内臓器官の表面を覆う薄い半透明の膜)で覆われていないため、がんが食道の壁から短期間で重要な周囲の臓器に広がりやすい
・食道壁内に血管やリンパ管が豊富なため、がんの早い時期からリンパ節(多数のリンパ管が合流する部分)や多臓器に転移を生じやすい
したがって、食道がんは治療が難しいだけでなく、胃がんや大腸がんといった他の消化器がんと同様か、それ以上に早期発見がきわめて重要ながんといえます。
治療には、主に以下のような方法が用いられます。
・内視鏡による治療法(EMR・ESD)
EMR:内視鏡的粘膜切除術。
ループ状のワイヤーに高周波電流を流し、そのワイヤーをしぼってがんを焼き切る方法
ESD:内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術。
針状の電気メスで腫瘍を剥離して一括切除する方法
・外科治療(手術)
・放射線治療
・化学療法(抗がん剤治療)
・化学放射線療法
患者さんの食道がんの進行度(Stage)と全身状態を考慮して、より効果的な治療法が選択されます。
Stage別の治療法は次の通りです。
・Stage 0
状 態 | がんが食道の粘膜のみにとどまっている |
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治療法 | 主に内視鏡による治療法 |
・Stage I~III
状 態 | がんが食道の粘膜より深くまで入っているが、周囲臓器への浸潤(しんじゅん)や多臓器への転移が見られない |
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治療法 | 基本的には外科治療(手術)だが、患者さんの状態によっては放射線化学療法が施行されることもある |
・Stage IV
状 態 | 周囲臓器への浸潤や多臓器への転移がある |
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治療法 | 放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)、化学放射線療法など |
日本における食道がんの主な危険因子として、飲酒と喫煙が挙げられます。飲酒と喫煙のどちらか一つでも危険因子になりますが、両方の場合は、リスクがより高くなります。また、アルコールをそれほど多く摂取しない方でも、体内でアルコールを上手に処理する能力が低いと、食道がんの発生率が高くなるといわれています。アルコールを処理する能力が低い方は、「酒を飲むと顔が赤くなる人」「初めて飲んだ頃に赤くなった人」「酒を飲んで頭がガンガンと痛くなる人」などです。このような方は注意が必要です。
早期の食道がんでは症状がない方が大多数なので、早期発見のためには検診(X線透視検査や内視鏡検査)が必要です。ただし、通常のバリウムを使ったX線透視検査では、早期の食道がんの発見は困難です。また、通常観察だけの内視鏡検査でも、早期の食道がんを発見することは難しいです。しかし、最近では内視鏡検査で食道粘膜に特殊な色素(ルゴール)を散布したり、あるいは特殊な青い光を当てることによって、微細な食道粘膜の異常でしかない早期の食道がんを発見することが可能になっています。
先に挙げた食道がん発生の危険因子に心当たりがある方は、早期発見のため、内視鏡検査による検診を受けることをお勧めします。
日本における食道がんに関しては、「早期発見のポイント」の項目で示したように、飲酒及び喫煙が主な危険因子と言えます。禁煙を徹底し、過度の飲酒を避けることが、食道がんの発生を予防する上では大切です。飲酒・喫煙以外に、食道粘膜へ継続的な刺激を与えることも食道がんのリスクを上げると考えられます。過度に熱い飲み物や食べ物の摂取、刺激性の強い食事などがこれにあたるので、食道がん予防の観点から控えることをお勧めします。また繰り返しになりますが、このような危険因子に心当たりがある方は、内視鏡による検診を受けることをお勧めします。
解説:宮﨑 充啓
唐津病院
外科医長
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