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2014.06.04
心臓は4つの部屋に分かれ、全身の血液を循環させるポンプとして働いている臓器です。筋肉の塊である心臓は、電気信号によってコントロールされています。正しい心臓の電気信号は、洞結節(どうけっせつ)から規則的に生じ、心房全体に行き渡った後、房室結節(ぼうしつけっせつ)を通過して心室全体を興奮させます。身体・心ともに落ち着いている時には40~80回/分で電気信号が流れますが、運動をしたり驚いたりすることで回数は増加します。電気信号が正常な状態を、脈が整っている「整脈」といいますが、電気信号が乱れた状態を「不整脈」といいます。不整脈は、脈が遅くなる徐脈性(じょみゃくせい)と、反対に速くなる頻脈性(ひんみゃくせい)に分けられます。
1 徐脈性不整脈
発電所である洞結節が弱る「洞不全」と、心房から心室に伝わりにくくなる「房室ブロック」の2つが代表的です。脈が遅くなると、身体の疲れやすさや息切れを感じたりします。また、3秒以上心臓が休むと脳への血流が止まってしまうので、意識を失う可能性があります。心臓には自家発電機能が備わっているので、すぐに命に関わることはまれです。洞不全、房室ブロックともに有効な薬はほとんどなく、必要があれば、脈を作り出すペースメーカの植え込みが行われます。
2 頻脈性不整脈
1拍だけ脈が乱れる「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」のような軽いものから、完全に乱れた電気信号になる「細動(さいどう)」までさまざまな種類があります。具体的には、心房で生じる心房細動や心房頻拍、心室で生じる心室細動や心室頻拍などが挙げられます。普段は正しい脈を保っていて、突発的に不整脈が出現する発作性のタイプが多くみられます。また、血液は心室から肺や全身に送り出されるので、一般的に心室で起こる不整脈の方が、心房で起こるものよりも重度になりやすいです。軽い不整脈では無症状か、ドキドキとした動悸を感じる程度ですが、最も重度の心室細動では、突然命を奪われる突然死に至る可能性があります。主な治療法には、薬物療法と、原因となっている部分を焼き切るカテーテルアブレーションがあります。また、命に関わる不整脈が起きた人や、起こる可能性が高い人には、突然死予防のために植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。
不整脈による自覚症状はさまざまで、動悸、息切れ、だるさ、疲れやすさ、意識消失などが挙げられます。これらの症状があれば、かかりつけの医師を受診して、脈や心電図をとってもらいましょう。期外収縮や心房細動などでは、無症状なことがまれではありません。無症状の人が、検診の心電図で不整脈が見つかる場合も多いので、検診をきちんと受けることは重要です。ただし、発作性の不整脈は1回の心電図では診断できない場合が多いため、検診をきちんと受けても見逃されることがあります。
無症状の不整脈は治療が必要ないものが多いですが、心房細動の場合は脳梗塞を引き起こす可能性があります。心房細動によって発症する脳梗塞は、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)の内服でかなりの予防が可能なので、早期診断が重要です。下記のような工夫をすると、発見されやすくなるので覚えておきましょう。
1 手首や肘で自己検脈をする
2 自動血圧計でときどき測定する(心房細動の場合、うまく測れないことがあります)
3 かかりつけの先生に、脈や心音をチェックしてもらう
不整脈には、生まれつきで防ぎようがないものと、適切な生活習慣などで予防が可能なものがあります。特に心房細動は、生活習慣あるいは生活習慣病との関連が強い不整脈の代表です。下記のような習慣、病気が心房細動を生じやすくするので、注意しましょう。
・飲酒
・喫煙
・高血圧症
・糖尿病
・心筋梗塞
・心不全
・慢性腎臓病
・睡眠時無呼吸症候群
・甲状腺機能亢進症
飲酒、喫煙を控え、適切な食事と適度な運動で、生活習慣病を予防することが原則です。適切な食事とは、塩分やカロリーを控えめにして、炭水化物(ごはんやパン)・タンパク質(肉や野菜、大豆など)・野菜をバランス良く摂ることです。塩分やカロリーをきちんと計算するのは大変ですが、あまり難しく考えずに、まずは減塩醤油を使ったりおやつを控えたりしてみましょう。それだけでもかなり違います。
不整脈の中で最も深刻なのは、突然死になり得る心室頻拍や心室細動です。これらは遺伝性の患者さんが多く、不整脈自体を予防することは困難ですが、不整脈が起こったときに適切な対応をすれば突然死を防ぐことはできます。迅速な心臓マッサージやAED(自動体外式除細動器)によって、心肺停止状態に陥った人を救える可能性があるのです。身近な人が倒れる場合を考えて、機会があれば市民向け心肺蘇生講習会を受け、心臓マッサージやAEDの使用方法を習得しておくとよいでしょう。
解説:長谷部 秀幸
静岡済生会総合病院
不整脈科科長
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