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2021.06.02
ヒトの心臓は四つの部屋(二つの心房と二つの心室)から構成されています。
心臓の中には刺激伝導系と呼ばれる回路が存在しており、洞結節から発生した刺激が回路内を伝わることにより、心房と心室が規則正しく収縮し血液が心臓から全身に送り出されるようになっています。
房室ブロックは心房と心室の間の刺激のつながりが悪くなり、伝導遅延をきたす病気です。つながりの低下の程度により1度から3度に分けられます。
第1度房室ブロックは、心房から心室へのつながりが遅くなりますが、通常症状はありません。第2度房室ブロックでは、時々心室に伝導が伝わらなくなります。第2度房室ブロックでは、脈が飛ぶなどを自覚する人がいますが、無症状のケースもあります。
心房と心室間の伝導がさらに悪くなり、心房と心室がそれぞれ勝手に(ばらばらに)収縮するようになった状態が第3度房室ブロックです。第3度房室ブロックは完全房室ブロックとも呼ばれ、通常は徐脈(心拍数低下)を生じるようになるため、脳血流量が低下し、めまい、ふらつき、時には意識消失発作などをきたします。息切れ、疲労感などの心不全の症状を契機に診断されることもあります。心筋梗塞や心筋症、心筋炎の合併症として生じることもありますが、明らかな原因が不明なことが多いとされています。
心電図検査でP波(心房の収縮を反映)とQRS波(心室の収縮を反映)の関係を確かめます。症状がないときは心電図では診断がつかないこともあります。その際はホルター心電図(24時間の心電図を記録)や、植込型ループレコーダー(より長時間の心電図を記録)により診断を確定することも有用です。
めまい・ふらつきなどの症状がない場合には、定期的に心電図検査などを行ない経過観察します。症状を伴う際には、現在のところ有用な薬剤はないため、心臓ペースメーカー移植の適応となります。徐脈を助長する薬剤(交感神経ベータ遮断薬、抗不整脈薬、一部のカルシウムチャンネル拮抗薬、一部の抗精神病薬)などが投与されている場合には、薬剤の休止により改善することもあります。腎機能の低下している患者さんや高齢の患者さんは、これらの薬剤に注意が必要です。
薬剤の副作用による場合や、心筋梗塞の合併症によるもの以外は、加齢により生じることが多いようです(原因不明)。第2度までの房室ブロックは、自覚症状がない場合、人間ドックや健康診断の心電図検査でたまたま指摘されることもあります。
他の不整脈にも当てはまることですが、普段から自分で脈をとる習慣をつけたり、定期的に心電図検査を受けたりすることで早期発見につながります。
多くの場合、原因が不明であるため予防は困難です。無症状の状態で房室ブロックと診断されたら、めまい、ふらつき、息切れなどの症状に注意して、失神、意識消失などによる二次災害を起こさないよう注意してください。
解説:山口 修
福島総合病院
循環器科 診療副部長
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