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2024.08.28
WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群は、先天性心疾患で、通常1本であるはずの心房から心室への電線(電気信号を伝える伝導路)以外に、余計な電線(副伝導路)がある状態をいいます。
心臓は、左右に分かれた上の部屋(心房)と下の部屋(心室)から成り立っています。心臓の拍動は右心房にある洞結節(どうけっせつ)から発生する電気信号によって制御されており、心房から刺激伝導系を通って心室へと流れることで、心房→心室の順に収縮を起こしています。
正常な心臓は、電気信号が正しい電線を通ってゆっくりと規則的に流れています。しかしWPW症候群の心臓の場合は、正常な心臓にはない副伝導路を経由する回路が成立します。通常、心房→心室の順にめぐるはずの電気信号が、心室→心房などへ不規則に伝わることで脈が速まり、動悸発作が起きることがあります。
動悸発作の特徴は、突然脈が150~200くらいまで上昇する(頻拍)点です。発作が停止するときは突然停止するため、止まった瞬間が分かる場合がほとんどです。脈が速くなることで激しい動悸を感じますが、失神したり、命にかかわることは基本的にありません。ただし、不整脈(心房細動、心房頻拍など)と合併すると突然死の原因となることもあるので注意が必要です。
心電図をもとに行なうこともありますが、副伝導路の伝導パターンによっては通常時の心電図は正常で、頻拍(急に心拍が上がる状態)が起きてから初めて診断に至る場合もあります。
右心房と右心室の間にある三尖弁(さんせんべん)がうまく機能せずに、血液が右心房へ逆流してしまう三尖弁逆流症、エプスタイン(Ebstein)病などといった先天性心疾患と合併している可能性もあるため、心臓超音波検査で心筋の動きや、送り出す血液の量、心臓弁の異常などを調べます。発作時の心電図のみでは診断に至らず、手足の血管から細い管を入れるカテーテル検査で、治療も兼ねて診断が確定する場合もあります。
動悸発作が出た場合、大きく息を吸い込んで力みながら息を止める「息こらえ」を行なったり、冷たい氷水で顔を洗ったりすることで発作が止まることもあります。また、発作を止める薬や定期的な内服で症状を予防することも可能です。薬で効果がみられない場合には、電気ショックで止める場合もあります。
原因を根本から解決するためには、カテーテルを使用し、余計な電線を焼灼(しょうしゃく=病気の組織を焼いて破壊する外科的治療)する方法があります。副伝導路は自然になくなることはないため、特に動悸発作がある場合には、カテーテル治療が行なわれます。
突然始まる頻拍という症状があるので、このような症状が出た場合は、早めに病院を受診してください。最近では学校の心臓検診の心電図で発見されるケースも増えています。
先天性の疾患であるため、予防することは難しいです。
解説:長谷川 智明
水戸済生会総合病院
循環器内科
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