済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2017.04.21
心臓と、心臓を覆っている心外膜の間には心(しん)のう液という液体が存在します。心のう液は心臓の拡張や収縮のための潤滑油になったり、外部からの衝撃を和らげるクッションのような役割を担っています。心タンポナーデは心のう液がいろいろな原因で大量に貯留し、心臓の動きを抑制する状態です。
原因
1 特発性:原因不明
2 感染性:ウイルス性、結核性、細菌性、真菌性による急性・慢性の心膜炎
3 非感染性:急性大動脈解離、急性心筋梗塞、悪性腫瘍の心膜浸潤、尿毒症、膠原病、薬剤性等
4 外傷性:交通事故等による胸部打撲
貯留する心のう液は炎症性の場合は淡黄色の浸出液ですが、大動脈解離、悪性腫瘍・結核性の場合は血性の場合もあります。
自覚症状としては胸部圧迫感、呼吸困難、起座呼吸(呼吸を楽にするため、上半身を起こした姿勢でする呼吸)等があります。心のう液の貯留によって心のう腔内圧が上昇し、心拍出量(心臓から運び出される血液量)の低下を認め血圧低下・頻脈(心拍数が増加している状態)となることで、ショック状態に陥ることもあります。
心筋梗塞での心破裂、解離性大動脈解離の心のう腔への穿破、外傷性の場合は少量でも重篤化し、状態によっては緊急開胸術が必要です。
血圧低下、静脈圧上昇、頻脈等がある場合は、胸部レントゲンでの心拡大、心電図での低電位、心エコー/胸部CTで心のう液貯留を確認します。
治療では、補液、強心剤の投与、必要に応じてエコーガイド下で心膜穿刺(しんまくせんし:心臓の膜に針を刺して液を出すこと)によって、液を排出します。
穿刺困難な場合は、外科的に剣状突起下アプローチによる排液も行ないます。慢性の心のう液貯留に対しては心膜切開(開窓術)を行なうこともあります。
大動脈解離、心筋梗塞の心破裂等の場合はそれぞれの原因の外科的治療も必要です。
原因により発症の機序(仕組み)が違うため、それぞれの病状に合わせて考える必要があります。
感染性の場合は先行症状として、発熱、鼻づまり、咳等の風邪の症状が出る場合があります。
大動脈解離、心筋梗塞の場合は胸部もしくは背部の突然の痛みを感じることが多いです。
特発性の予防は困難ですが、大動脈解離、心筋梗塞の予防としては高血圧、脂質異常の治療が有効と考えられます。大動脈解離は突然の発症のときもありますが、検診等で大動脈の拡張がみられる場合は、定期的なCT等での検査をお勧めします。
解説:美馬 敦
済生会今治病院
循環器内科副院長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。