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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2020.09.16
ジフテリアはジフテリア菌によって、主として喉や鼻が侵される感染症です。ジフテリアに感染した人のくしゃみやせきによって生じた飛沫を吸い込んだり、ジフテリア菌が付着したドアノブやタオルなどを触ったりすることで感染します。2~5日の潜伏期間の後、喉の痛みや鼻水、発熱、首のリンパ節の腫れ、息苦しさなどの症状が現れます。また眼、耳、皮膚、陰部に症状が出ることもあります。さらに、ジフテリア菌が作り出す毒素によって心臓や神経が侵されると、重症化により感染者の5~10%が亡くなるといわれています。
日本ではワクチンの普及により、1999年の報告以降は発症例がありません。しかしながら、発展途上国ではいまだに流行がみられ、国際的に予防対策が必要かつ可能な病気とされています。
鼻水や発熱、喉の痛み、だるさ、飲み込むときの違和感、首のリンパ節の腫れなど、さまざまな症状が現れますが、嗄声(させい=かすれ声)・犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう=犬が吠えるようなせき)が特徴的です。これは、ジフテリア菌が喉などに作り出す「偽膜」(細菌や白血球、血液の成分でできた厚い灰色の膜)によって気道が狭くなるために起こり、呼吸困難の原因にもなります。発症早期や回復期にジフテリア菌の毒素による心筋炎(心臓の筋肉の炎症)を合併すると、不整脈から突然死や心不全につながることがあるので注意が必要です。
鼻水や発熱、喉の痛みなどの風邪のような症状がある人で、喉に特徴的な偽膜の形成がみられた場合はジフテリアを疑います。喉に付着した痰や唾液を採取して顕微鏡検査、PCR検査、培養検査を行ない、診断を確定します。首のリンパ節の腫れ、嗄声や犬吠様咳嗽などの症状があれば、さらにジフテリアを強く疑います。なお、この時点で心筋炎を起こしていないかをみるために心電図検査を行なうこともあります。
ジフテリアは早期に治療を開始する必要があるため、症状などから本症を疑った時点で確定診断を待たずに、血清療法と抗菌化学療法を併用して行ないます。血清療法では、ウマ由来のジフテリア抗毒素を投与して、ジフテリア菌が作り出した毒素を中和します。また、抗菌化学療法では、ペニシリンやエリスロマイシンといった抗菌薬(抗生物質)で菌を殺します。ジフテリア菌は感染力が強いため、菌がいなくなったことが確認できるまで、隔離しての治療が必要です。
最初は風邪のような症状であっても、喉に特徴的な偽膜や、首のリンパ節の腫れ、嗄声や犬吠様咳嗽などの症状があれば、ジフテリアを疑うことが早期発見につながります。特にワクチン(ジフテリアトキソイドを含むもの)を接種していない人は十分に注意が必要です。
ジフテリアの予防には何といっても予防接種が必要かつ有効で、幼少期の定期接種にも含まれています。わが国では1948年からジフテリア単独ワクチンの接種が始まり、2012年11月からは、現在の四種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオの混合ワクチン)が導入されました。このワクチンは、生後3カ月から1歳までの間に3週から8週あけて3回、さらに初回接種後1年から1年6カ月後に1回接種します。また11歳から12歳で二種混合ワクチン(DT:ジフテリア、破傷風)も接種するので、ジフテリアトキソイドは合計5回接種することになっています。その後は10年ごと、特にジフテリアの流行地域に渡航する際には追加接種が推奨されています。
解説:久保園 高明
鹿児島病院
院長
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