社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
2019.03.29

今年のゴールデンウイークは10連休。海外旅行を検討している人にとって、渡航先で注意すべき病気は気になるところ。そんなとき、海外へ行く前に情報収集と対策を行なうには、病院の「渡航前外来」を活用しましょう。今回は、鹿児島病院の渡航前外来を担当する、久保園高明先生に、旅行などで渡航する際に注意すべき病気と、渡航前に取るべき対策を聞きました。

海外旅行へ行く前に! 渡航先に合わせて病気の対策を

今年のゴールデンウイークは10連休。海外旅行を検討している人にとって、渡航先で注意すべき病気は気になるところ。そんなとき、海外へ行く前に情報収集と対策を行なうには、病院の「渡航前外来」を活用しましょう。今回は、鹿児島病院の渡航前外来を担当する、久保園高明先生に、旅行などで渡航する際に注意すべき病気と、渡航前に取るべき対策を聞きました。

渡航前に必要な準備

海外に行く際、行き先や滞在期間によってはワクチン接種や健康診断の証明書などが必要となることがあります。
渡航が決まったら、まずは 厚生労働省検疫所のホームページを確認しましょう。国ごとに必要なトラベラーズワクチン(渡航中の感染症を防ぐため渡航前に受ける予防接種)や、流行している病気などの情報が掲載されています。ワクチン接種が必要な場合は、医療機関を受診しましょう。

冷蔵庫で保管されているワクチン

要な理由は大きく二つあります。一つは、衛生状態が悪い国で感染症を予防するため、もう一つは、渡航先の法律に準拠するためです。例えば、アメリカではおたふくかぜの予防接種を2回受けることが義務付けられていますが、日本では義務でないため、受けていない可能性があります。その場合は、アメリカの法律に従って渡航前に接種します。ただし、1~2週間程度の短期間の滞在ではほぼ不要です。

地域別の注意すべき病気

地域ごとに流行している感染症は異なります。滞在先に合わせて、ワクチンを接種しましょう。

  • すべての地域=A型肝炎/B型肝炎/破傷風
    多くの地域でこの3つの病気についてはワクチン接種をお勧めします。 特に、A型肝炎については、発展途上国へ渡航する場合、短期間であっても接種をお勧めしています。その一方で、B型肝炎と破傷風は、短期滞在の場合必ずしも接種の必要はありません。
    また、2018年から2019年にかけて、世界的に麻疹が流行しています。予防法はワクチン接種以外にないので、成人で2回以上接種を受けていない人は必ず受けましょう。
    上記以外では、ワクチン接種が必要とされている国でも、先進国への短期滞在であれば、ほとんど接種は必要ありません。
  • アジア=日本脳炎
    子どものころに定期接種を受けている人が多いのですが、北海道では日本脳炎が流行していないため、道民の方は接種していない可能性が高いです。北海道出身の方や、定期接種で得た抵抗力が弱まっていると考えられる30歳以上の人は、改めてワクチンを接種しましょう。
  • ヨーロッパ=ダニ媒介性脳炎
    インフルエンザのような発熱や頭痛が起こり、致死率が1~2%、回復しても言語障害や麻痺などの神経学的後遺症が発生する可能性が10~20%となっています。ウィーンで時折感染が報告されるなど、観光地でも注意が必要です。
  • 中央アフリカ=髄膜炎
    特に「髄膜炎ベルト」と呼ばれる、セネガルからエチオピアまでの地域では、髄膜炎菌ワクチンが必須です。髄膜炎は致死率が高く、救命できても知的障害などの重い後遺症を残すことがあるほか、敗血症を合併し重症化することもあります。飛沫感染するため、中央アフリカへの渡航以外でも、留学や赴任する先で入寮するなど、さまざまな国の人とともに集団生活を送る場合もワクチンを接種しましょう。
  • その他=狂犬病
    ジャングルに行く、動物に関する仕事をするなど動物と触れる可能性がある場合は、ワクチンを接種しましょう。

 

表:海外渡航で検討する予防接種の種類の目安

短期観光客向け
地域 黄熱 A型肝炎
北アメリカ    
カリブ  
中央アメリカ
南アメリカ
中央アジア  
東アジア  
東南アジア  
南アジア  
西アジア  
豪州・ニュージーランド    
メラネシア  
ミクロネシア  
ポリネシア  
北アフリカ
東アフリカ
中央アフリカ
西アフリカ
南アフリカ  
北ヨーロッパ    
東ヨーロッパ    
西ヨーロッパ    
南ヨーロッパ    
冒険旅行および長期(1カ月以上)滞在者向け
地域 黄熱 A型
肝炎
B型
肝炎
ポリオ 狂犬病 日本
脳炎
北アメリカ          
カリブ      
中央アメリカ    
南アメリカ    
中央アジア      
東アジア    
東南アジア    
南アジア  
西アジア    
豪州・
ニュージーランド
           
メラネシア      
ミクロネシア      
ポリネシア      
北アフリカ    
東アフリカ  
中央アフリカ  
西アフリカ  
南アフリカ      
北ヨーロッパ          
東ヨーロッパ      
西ヨーロッパ          
南ヨーロッパ      
●: 黄熱に感染するリスクがある地域に渡航する場合は予防接種が必要です
▲: 北アフリカのうちスーダン南部に渡航する場合は予防接種が必要です
◎: 渡航前の予防接種をお勧めしています
〇: 局地的な発生があるなど、リスクがある場合には接種を検討してください
※麻疹、風疹、破傷風、インフルエンザは渡航先にかかわらず、必要な方には予防接種をお勧めしています。
参考
厚生労働省検疫所FORTHホームページ: https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html

レジャーでの注意点

感染症以外にも、日本と環境が異なることでかかりやすくなる病気が存在します。地域に関係なく、レジャーで登山やダイビングをする場合は以下のことに注意しましょう。

登山をする、高所へ行く場合

高山病に気を付けましょう。標高2500メートル以上の高地は気圧が低く空気が薄いため、頭痛、睡眠障害、食欲不振などの症状が出ることがあります。高齢者が発症しやすく、疲労や病気を抱えている場合はよりリスクが高くなります。余裕のあるスケジュールでゆっくり登り、上記の症状が出たら思い切って中断しましょう。予防薬はありますが、必ず予防できるわけではないので注意が必要です。
また、高地で気圧が変わることにより虫歯が痛くなることがあるので、治療しておくことをお勧めします。

ダイビングをする場合

潜水病(減圧病)にかかることがあります。ダイビングをした当日に飛行機に乗ると、気圧の大きな変化で関節や筋肉の痛み、呼吸困難などの症状が現れます。予防薬はないので、ダイビングをしたら少なくとも1日は平地で過ごし、身体を慣らしてから帰国してください。

帰国後に気になる症状があったら

帰国後に異常な全身倦怠感や食欲不振がある場合は、A型肝炎、B型肝炎の可能性があります。それ以外でも、原因不明の熱が3日程度続くようであれば受診をお勧めします。受診の際、医師に自分が行ってきた国とそこではやっている病気を伝えることが大切です。
日本渡航医学会のホームページに「帰国後診療医療機関リスト」が掲載されているので、近くに該当する医療機関があればそこを受診しましょう。ない場合は、まずかかりつけ医や保健所に相談してみてください。

長期間滞在するときは

長期間の留学や赴任では、留学先の学校や赴任先の企業から、健康診断の結果やワクチン接種歴がわかる母子手帳などの資料を求められる場合があります。必要な書類を医療機関に発行してもらいましょう。
また、ワクチンによっては日にちを空けて複数回打つ必要があります。1年程度滞在する場合や急に渡航が決まった場合は、1カ月で2回以上の接種が必要なワクチンもあるので、最低でも渡航の1カ月前から受診しましょう。2年以上滞在する場合は、1回目の接種から半年後に接種が必要なワクチンもあるため、半年前から受診し始めるのが望ましいです。ただし、母子手帳で接種が確認できた場合などは接種回数を減らすことができます。半年以内に出国する場合は、一時帰国した際に残りを打つか、現地で接種を受ける必要があります。現地では外国製のワクチンを使うなどの対応が必要になるので、医療機関に相談してみてください。

解説:久保園 高明

解説:久保園 高明
鹿児島病院
済生会鹿児島病院 院長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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