済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
海外に行く際、行き先や滞在期間によってはワクチン接種や健康診断の証明書などが必要となることがあります。
渡航が決まったら、まずは 厚生労働省検疫所のホームページを確認しましょう。国ごとに必要なトラベラーズワクチン(渡航中の感染症を防ぐため渡航前に受ける予防接種)や、流行している病気などの情報が掲載されています。ワクチン接種が必要な場合は、医療機関を受診しましょう。
冷蔵庫で保管されているワクチン
要な理由は大きく二つあります。一つは、衛生状態が悪い国で感染症を予防するため、もう一つは、渡航先の法律に準拠するためです。例えば、アメリカではおたふく風邪の予防接種を2回受けることが義務付けられていますが、日本では義務でないため、受けていない可能性があります。その場合は、アメリカの法律にしたがって渡航前に接種します。ただし、1~2週間程度の短期間の滞在ではほぼ不要です。
地域ごとに流行している感染症は異なります。滞在先に合わせて、ワクチンを接種しましょう。
表:海外渡航で検討する予防接種の種類の目安
短期観光客向け | ||
---|---|---|
地域 | 黄熱 | A型肝炎 |
北アメリカ | ||
カリブ | ○ | |
中央アメリカ | ● | ○ |
南アメリカ | ● | ○ |
中央アジア | ○ | |
東アジア | ○ | |
東南アジア | ○ | |
南アジア | ○ | |
西アジア | ○ | |
豪州・ニュージーランド | ||
メラネシア | ○ | |
ミクロネシア | ||
ポリネシア | ||
北アフリカ | ▲ | ○ |
東アフリカ | ● | ○ |
中央アフリカ | ● | ○ |
西アフリカ | ● | ○ |
南アフリカ | ○ | |
北ヨーロッパ | ||
東ヨーロッパ | ||
西ヨーロッパ | ||
南ヨーロッパ |
冒険旅行および長期(1カ月以上)滞在者向け | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
地域 | 黄熱 | A型 肝炎 |
B型 肝炎 |
ポリオ | 狂犬病 | 日本 脳炎 |
北アメリカ | ○ | |||||
カリブ | ○ | ○ | ○ | |||
中央アメリカ | ● | ◎ | ○ | ○ | ||
南アメリカ | ● | ◎ | ○ | ○ | ||
中央アジア | ◎ | ○ | ○ | |||
東アジア | ◎ | ○ | ○ | 〇 | ||
東南アジア | ◎ | ○ | ○ | 〇 | ||
南アジア | ◎ | ○ | 〇 | ○ | 〇 | |
西アジア | ◎ | ○ | 〇 | ○ | ||
豪州・ ニュージーランド |
||||||
メラネシア | ○ | ○ | ○ | |||
ミクロネシア | ||||||
ポリネシア | ||||||
北アフリカ | ▲ | ◎ | ○ | ○ | ||
東アフリカ | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
中央アフリカ | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
西アフリカ | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
南アフリカ | ◎ | ○ | 〇 | |||
北ヨーロッパ | 〇 | |||||
東ヨーロッパ | 〇 | 〇 | 〇 | |||
西ヨーロッパ | 〇 | |||||
南ヨーロッパ | 〇 | 〇 | 〇 |
●: | 黄熱に感染するリスクがある地域に渡航する場合は予防接種が必要です |
▲: | 北アフリカのうちスーダン南部に渡航する場合は予防接種が必要です |
◎: | 渡航前の予防接種をお勧めしています |
〇: | 局地的な発生があるなど、リスクがある場合には接種を検討してください |
※麻疹、風疹、破傷風、インフルエンザは渡航先にかかわらず、必要な方には予防接種をお勧めしています。 |
感染症以外にも、日本と環境が異なることでかかりやすくなる病気が存在します。地域に関係なく、レジャーで登山やダイビングをする場合は以下のことに注意しましょう。
高山病に気を付けましょう。標高2500メートル以上の高地は気圧が低く空気が薄いため、頭痛、睡眠障害、食欲不振などの症状が出ることがあります。高齢者が発症しやすく、疲労や病気を抱えている場合はよりリスクが高くなります。余裕のあるスケジュールでゆっくり登り、上記の症状が出たら思い切って中断しましょう。予防薬はありますが、必ず予防できるわけではないので注意が必要です。
また、高地で気圧が変わることにより虫歯が痛くなることがあるので、治療しておくことをお勧めします。
潜水病(減圧病)にかかることがあります。ダイビングをした当日に飛行機に乗ると、気圧の大きな変化で関節や筋肉の痛み、呼吸困難などの症状が現れます。予防薬はないので、ダイビングをしたら少なくとも1日は平地で過ごし、身体を慣らしてから帰国してください。
帰国後に異常な全身倦怠感や食欲不振がある場合は、A型肝炎、B型肝炎の可能性があります。それ以外でも、原因不明の熱が3日程度続くようであれば受診をお勧めします。受診の際、医師に自分が行ってきた国とそこではやっている病気を伝えることが大切です。
日本渡航医学会のホームページに「帰国後診療医療機関リスト」が掲載されているので、近くに該当する医療機関があればそこを受診しましょう。ない場合は、まずかかりつけ医や保健所に相談してみてください。
長期間滞在するときは
長期間の留学や赴任では、留学先の学校や赴任先の企業から、健康診断の結果やワクチン接種歴が分かる母子手帳などの資料を求められる場合があります。必要な書類を医療機関に発行してもらいましょう。
また、ワクチンによっては日にちを空けて複数回打つ必要があります。1年程度滞在する場合や急に渡航が決まった場合は、1カ月で2回以上の接種が必要なワクチンもあるので、最低でも渡航の1カ月前から受診しましょう。2年以上滞在する場合は、1回目の接種から半年後に接種が必要なワクチンもあるため、半年前から受診し始めるのが望ましいです。ただし、母子手帳で接種が確認できた場合などは接種回数を減らすことができます。半年以内に出国する場合は、一時帰国した際に残りを打つか、現地で接種を受ける必要があります。現地では外国製のワクチンを使うなどの対応が必要になるので、医療機関に相談してみてください。
解説:久保園 高明
鹿児島病院
済生会鹿児島病院 院長
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