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2018.09.19
黄熱ウイルスに感染したネッタイシマカという蚊に刺されることで感染します。病名は黄疸(おうだん=体が黄色くなる症状)が現れることに由来しています。アフリカや南米のアマゾン川流域ではいまだに流行しており、渡航者にも感染するリスクがあります。全世界の患者数は年間20万人と推定されています。
黄熱ウイルスのヒトへの感染様式は3つあります。「ジャングル(森林)型サイクル」は、蚊とサルの仲間の間で形成され、ジャングルに入った人が蚊を介してサルなどからウイルス感染します。「中間(サバンナ)型サイクル」は、アフリカにおいて蚊とサルの仲間、そしてジャングルの周辺境界部で生活する人の間で形成されます。蚊を介してサルの仲間からヒトへ、あるいはヒトからヒトへウイルスが感染します。「都市型サイクル」は、ヒトと都市の蚊の間で形成されます。
図:3つの感染サイクル
診断は血液から黄熱ウイルス遺伝子または抗体を検出することで下されます。また、致死率が高く危険ですが、一度感染すると免疫を獲得することができます。
感染しても症状がはっきり出ない場合が多いですが、3~6日程度の潜伏期を経て突然の悪寒とともに発熱や頭痛、筋肉痛、嘔吐などが現れる可能性があります。ほとんどの場合、これらの初期症状が現れても後で回復しますが、15%程度の割合で重症化し黄疸や出血傾向(鼻出血、歯肉出血、下血など)などの徴候が出て、最終的に血圧低下や多臓器不全(複数の臓器障害が起きる状態)に至ります。重症例での致死率は20%と高く、免疫のない渡航者では60%に達します。
特別な治療法はなく、解熱剤投与や点滴による水分補給などの対症療法のみです。早期の治療が重要になります。感染した場合は、症状が出て2~3日間は蚊に刺されないようにする必要があります。
アフリカや南米のアマゾン川流域など流行地域への渡航歴があり、突然の発熱や頭痛、嘔吐などの症状がある場合は黄熱の疑いがあります。その場合は早期に医療機関を受診しましょう。黄熱ワクチンを接種していない人やアレルギーなどが原因で接種できない人は、重症化する恐れがあるので特に注意しましょう。
黄熱ワクチンの接種が重要です。黄熱ワクチンは副作用が少なく有効性が高いワクチンとして知られています。現在製造されている生ワクチンは接種10日後から生涯有効で、1回の接種で十分な免疫を獲得できます。
流行地域に入国する際にワクチン接種証明書が必要になることがあるため、渡航先の状況を事前に確認しておきましょう。また、感染リスクが低くワクチン接種が推奨されていない地域でも、森に行くなど蚊に刺される機会が多い場合や、アレルギーで虫よけスプレーが使えないなど防蚊対策がとれない場合は、ワクチン接種を考慮する必要があります。しかし、卵、鶏肉、ゼラチンに対してアレルギーを持っている人や免疫力が低下している人、または妊娠・授乳している人はワクチンを接種できるか主治医やトラベルクリニック(渡航医学外来)の医師、保健所の担当者などに確認してください。高齢者は若年者に比べて重い副反応が起こるリスクが高まるため、感染するリスクと副反応が起こるリスクを考慮し、かかりつけ医があれば相談しましょう。
その他に、蚊を避けることが重要です。長袖長ズボンの着用により肌の露出を減らしたり、昆虫忌避剤(DEET)入りの虫除けや蚊帳を使用したりすることが推奨されます。
解説:岩崎 教子
済生会福岡総合病院
感染症内科主任部長
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