気温が低く空気が乾燥する冬は、ウイルスによる感染症のリスクが高まります。2023年5月に5類感染症に移行後、あまり聞かなくなった新型コロナウイルスの感染拡大情報ですが、現状はどうなっているのでしょうか。流行している変異株やワクチンのことなど、気になる新型コロナの最新情報を鹿児島病院の久保園高明院長に聞きました。
5類移行後も変化し続けるコロナウイルス
Q.感染者数の推移はどうなっている?
A.2023年5月~2024年4月の1年間で、新型コロナウイルス感染症による死亡者数は32576人(厚生労働省 人口動態統計)。この数値は同期間の季節性インフルエンザによる死亡者数2244人の約15倍で、約97%を65歳以上の高齢者が占めています。
2023年5月の5類感染症移行後、約半年ごと(夏・冬)に感染者数の増加を繰り返しています。このような“流行の波”ができる理由としては、ウイルスの変異によって免疫が効きにくくなることや、エアコンを使用する際に窓を閉め切るため密閉された空間ができやすいなどが挙げられます。
Q.変異株とは? 今はどんなウイルスが流行っているの?
A.「変異株」とは、ウイルスが増殖した際に、遺伝子のコピーミスにより元々のウイルスの遺伝情報とは異なる性質に変化したウイルスのことです。現在は2022年以降主流となっているオミクロン株の派生型で、「KP.3」が流行中。以前に流行した「JN.1」と比べて感染力は2割ほど高く、ワクチン接種により作られた免疫からも逃れられる力を持ちます。10月から開始したワクチンの定期接種
Q.対象者や、接種にかかる費用は?
A.65歳以上の高齢者や、60~64歳までの一定の基礎疾患を有する人が対象で、年に1回、公費で接種を受けられます(一部自己負担あり)。自治体によって、自己負担額や接種できるワクチンの種類は異なるため、居住する市町村の窓口に問い合わせてみてください。また、定期接種の対象外となる64歳以下の人が接種を希望する場合は、原則全額自己負担となります。詳しくは厚生労働省のリーフレットを参考にしてください。
Q.今受けられるワクチンの種類は?
A.定期接種に使用される新型コロナワクチンは5製品あり、mRNAワクチン、組換えタンパクワクチン、そして新たに登場した次世代型mRNA(レプリコン)ワクチンの3種類に分けられます。
Q.他の感染症予防ワクチンと同時に接種しても大丈夫?
A.担当の医師の判断に委ねられていますが、最近ではインフルエンザワクチンと同時に接種すること(左腕・右腕に分けて注射をするなど)がよくみられます。高齢者の場合、医師が特に必要と認めれば肺炎球菌ワクチンを同時に打つこともあります。
冬の流行予報と対策
Q.冬のコロナ流行予報を教えて!
A.2023年同様、今季も1~2月に流行ピークがくるのではないかと予想しています。その波に備え、今からできる感染予防対策や生活習慣の見直しをしていくことが求められます。
Q.新型コロナと合わせて気を付けたい感染症は?
A.例年並みに流行しているのがインフルエンザですが、それと同時に感染者が急増しているのがマイコプラズマ肺炎。今年は異例の流行となっています。
冬はウイルスによる感染症が流行しやすく、その他の感染症などともなかなか区別がつけにくい状況にあります。発熱や咳が続くようであれば病院を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。高齢者は早めの受診を心がけてください。
Q.感染を防ぐために・感染してしまったら?
A.5類移行後も、感染予防対策の具体的な方法はこれまでと変わりません。今一度、こまめな手洗い、感染の可能性がある場合にはマスクの着用、屋内や密集した空間にいる場合には換気をするなど、基本的な感染予防対策を見直しましょう。
Q.再び新型コロナが大流行する可能性は?
A.今後、ウイルスに大きな変異がない限りは大流行の可能性は少ないといえるでしょう。正しい情報を見極め、状況に応じた対策を一人ひとりが心がけていくことで、自分と大切な人の感染リスクを減らしましょう。
解説:久保園 高明
鹿児島病院
院長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。
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