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2015.09.14
偽膜性大腸炎とは、大腸の粘膜表面に数mm程度の白色調をした半球状の膜(偽膜)の形成を特徴とする病気です。
本来、健康な人の大腸内はさまざまな細菌がバランスを保って生息していて、健康維持に役立っています。ところが、抗生物質の服用によって正常な腸内細菌のバランスがくずれ、ある種の菌が異常に増え(菌交代現象)、大腸に炎症を起こすことがあります。
この代表的なものが感染性大腸炎の一種である偽膜性大腸炎で、そのほとんどが「クロストリジウム・ディフィシル」という菌が原因で引き起こされます。抗生物質の使用に伴う菌交代現象を背景に、異常増殖したクロストリジウム・ディフィシル菌が産生する毒素により、腸管粘膜が傷害されることによって発生するといわれています。
この菌は、栄養不足や乾燥、熱など増殖に不都合な環境になると、菌の体内に芽胞という耐久性の構造物を形成します。これによって胃酸などにも強い抵抗性を示し、自らを守りながら人体の口から腸まで容易に到達することが知られており、体外環境でも長時間生存できます。
主な症状は下痢です。抗生物質の投与後、数日~2・3週後に頻回の水様便、粘液便などがみられ、腹痛や38℃を超える発熱などを引き起こすこともあります。
重症例では血液の混じった下痢になったり、低蛋白血症、電解質異常、麻痺性腸閉塞、中毒性巨大結腸症などを発症することもあります。
参考文献
1 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎 (厚生労働省/2008年)
2 クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎 メルクマニュアル 家庭版 (2006年)
抗生物質を服用していて、または、飲み終わって数日経った後で「頻繁に下痢がおきる」「粘性のある便」「お腹が張る」「腹痛」「発熱」「吐き気」などの症状がみられた場合は偽膜性大腸炎の疑いがありますので、早めに医師や薬剤師に連絡しましょう。放置すると重症化し、低蛋白血症、電解質異常、麻痺性腸閉塞、中毒性巨大結腸症などを発症することがあります。
腹痛に対して抗生物質を使用した場合にも偽膜性大腸炎を発症することがあるので、新たな腹痛や水のような下痢が生じた場合には、すぐに医師に連絡してください。また、抗生物質を中止した後で発症することもあります。
受診の際には、服用した医薬品の種類、服用からどのくらい経っているのか、便の状態、症状の種類、程度などを医師に知らせてください。
「医学解説」でも解説したように、偽膜性大腸炎の主な原因菌であるクロストリジウム・ディフィシル菌は、栄養不足や乾燥、熱など増殖に不都合な環境になると、菌の体内に芽胞という耐久性の構造物を形成します。芽胞は体内だけでなく体外環境中でも長期間存在しうることから、この病原体による環境の汚染が問題となります。予防のためにも、偽膜性大腸炎を発症した人に接する場合は、頻回の手洗いの励行が最も重要です。
解説:小林 博文
広島病院
内科医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。