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2015.06.03
濾胞性(ろほうせい)リンパ腫とは、悪性リンパ腫の中でも病気の進行が比較的遅いタイプ(低悪性度)のリンパ腫の一つで、年単位でゆっくりとした経過をたどることがほとんどです。そして、消化管濾胞性リンパ腫は、消化管(食道~大腸)で発生する濾胞性リンパ腫のことを指します。比較的まれな病気で、消化管に発生するほかの悪性リンパ腫も合わせた総数の1~3%程度といわれています。
消化管の名称
消化管濾胞性リンパ腫は、消化管のなかでも、小腸の十二指腸に多く発生すると考えられていましたが、小腸検査法の発展(カプセル内視鏡の登場)により、この病気の約80%で小腸のほかの部位(空腸や回腸)にも病変が多発していることが分かりました。食道や胃、大腸では病変を認めることは少ないです(0.5~5%)。初期病変の典型的な内視鏡画像としては、消化管の粘膜に「白い小さなプツプツ(隆起)」が多発している像が見られます。基本的にはゆっくり進行するのですが、途中で細胞の性格が変わることにより急速に病状が進行します。
まれな病気なので確立した治療法はなく、リンパ節に発生する濾胞性リンパ腫の治療に倣って抗がん剤や放射線治療が検討されますが、治療で完全に治すことは難しく、治療でいったん良くなっても再発することが多いと考えられています。進行がゆっくりしており、進行するまで症状も乏しいので、あえて早期からは治療を開始せずに、検査をしながら経過観察をしていくという選択肢もあります。近年では、薬の発達により、B細胞リンパ腫(濾胞性リンパ腫もB細胞リンパ腫の一種)に非常によく効く「リツキシマブ」という分子標的薬(体内の特定の分子を狙い撃ちし、その機能を抑える薬)が開発され、B細胞リンパ腫の予後を飛躍的に改善しています。リツキシマブと抗がん剤を併用した治療法は、濾胞性リンパ腫にもよく効き、期待できる治療法と思われますが、歴史が浅いので、どの程度消化管濾胞性リンパ腫の患者さんの寿命を長くすることができるのか、完全に治すことができるのか、いつ治療を開始したら良いのか、はっきりしたことはまだ分かっていません。
早期には自覚症状はなく、症状を自覚したときにはすでに進行している場合がほとんどです。十二指腸の下行部というところに病変を認めることが多いので(約7割)、健康診断などで行われる胃カメラで、十二指腸の奥までしっかり観察してもらうようにしましょう。正常の構造物でも、消化管濾胞性(ろほうせい)リンパ腫でよく見られる「白い小さなプツプツ(隆起)」と似たものがあり、見た目だけでは区別できず、組織の検査をしないと診断できないので、バリウムなどの造影剤を飲んで調べる胃透視検査では分かりません。
リンパ節に発生する濾胞性(ろほうせい)リンパ腫の原因も解明されておらず、消化管に発症する濾胞性リンパ腫はまれなので、その病態もまだ研究中です。したがって、予防法は今のところ確立されていません。
解説:児玉 美千世
広島病院
内科医長
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