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2014.08.20
発熱や痰などの風邪症状が治まったにもかかわらず、せきだけが全く治まらないといった症状が8週間以上続いている場合は、せき喘息の可能性があります。
せき喘息は、慢性的にせきのみが続く気管および気管支の病気です。喘息と同じでさまざまな刺激に対して過敏に気管・気管支が反応して狭くなり、炎症やせき発作が引き起こされてしまいます。その要因としては、ハウスダスト、カビ、ペットの毛、花粉、冷たい・暖かい風、タバコの煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張などが挙げられます。風邪と一緒に起こることが多く、風邪をひいた後に2~3週間以上せきが続くことがあれば、発症した可能性があります。また、特にアレルギー体質の人に多く発症すると報告されており、近年患者さんの数は増加しています。女性に多い傾向があり、しばしば再発を繰り返すこともあります。
風邪薬、抗菌薬、せき止めは、せき喘息に対してほとんど効果がありません。治療としては、気管支拡張薬(気管支を拡張させて通気をよくし、呼吸を楽にする薬)や吸入ステロイドを中心に行います。気管支拡張薬は、せき喘息の診断にも用いられます。気管支拡張薬を吸入してせき症状が治まれば、せき喘息だと考えられます。吸入ステロイドに関しては、内服薬のステロイドと異なり、気管・気管支に直接作用するために全身的な副作用が少なく、局所の炎症を抑える効果があります。現在、吸入ステロイドと気管支拡張薬が一つになった吸入薬も発売されており、治療として用いられています。
また、せき症状が治まったからといって治療をすぐに止めてしまうと再発する可能性があるので、数カ月は治療を継続することが必要です。
自然に症状が治まることもありますが、約30%が喘息に移行すると言われています。喘息への移行を予防するためにも、早い段階から吸入ステロイドによる治療が必要とされています。
せきのみの症状が、8週間以上にわたって続いているときは、せき喘息の可能性があります。喘息症状の特徴である「ヒューヒュー」、「ゼイゼイ」といった喘鳴(ぜんめい)による息苦しさはありません。風邪に併発して起こることが多く、風邪をひいた後に2~3週間以上せきが続くことがあれば、発症した可能性があります。しかし、38℃以上の熱やたんなどの症状はほとんどありません。
一般的に、せきは寝入るときや、深夜から明け方にかけて頻繁に起こり、ハウスダスト、カビ、ペットの毛、花粉、冷たい・暖かい風、タバコの煙、会話、運動、飲酒および精神的緊張などが誘因となります。
成人のせき喘息患者のうち30%以上が、無治療によって喘息に移行することが知られています。早い段階から正しい診断と治療を行い、健康管理を続けることが大切です。
予防のために、以下の5点を心がけましょう。
(1)風邪やインフルエンザを予防する
風邪やインフルエンザにかかると、細菌やウイルスによって気道が傷つけられます。その結果、ちょっとした刺激にも反応し、気道が収縮してせきが起こりやすくなります。特に、冬のインフルエンザが流行するシーズンには、インフルエンザワクチンの接種に加えて、外出時はマスクを装着し、帰宅したら手洗いとうがいを心がけましょう。
(2)タバコの煙に気をつける
タバコの煙は気管支を刺激し、せきの原因となります。自分自身の禁煙は当然ですが、家庭や職場など、周囲の人にも禁煙や分煙を徹底してもらいましょう。
(3)急激な気温の変化に気をつける
急激な気温変化の刺激は、せき喘息の発作を招きます。特に、春や秋の季節の変わり目による気温の変化には注意が必要です。また、室外と室内の温度調整を一定に保つように、服装や冷暖房器具を調整しましょう。
(4)生活のリズムや食生活を整える
早寝早起きといった、できる限り一定のリズムで生活することと、適度な運動を心がけましょう。生活の乱れからくるストレスは、せき症状が増悪する原因となります。また、せき症状が強いときには、アルコールは原則控えましょう。バランスのよい食生活も大切です。
(5)アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)を避ける
ハウスダスト、カビ、ペットの毛、花粉などのアレルゲンを可能な限り排除して避けましょう。定期的に布団や枕などの寝具を干し、部屋の掃除をすることも心がけましょう。掃除中にアレルゲンを吸い込む可能性もあるので、マスク着用も必要です。
解説:今岡 治樹
大牟田病院
内科医長
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