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2018.07.25
マイコプラズマニューモニエという細菌が、気管や気管支から感染して起こる肺炎です。発症した人の咳やしぶきを直接吸い込んだり、しぶきに触れた手で鼻や口を触ったりすることで感染します。インフルエンザに比べると感染力は強くありませんが、発症者と濃厚に接触する機会の多い家庭や学校などでは、感染して広がっていくことがあり注意が必要です。患者さんの多くは、幼稚園児~中高生、あるいは若くて持病がない健康な成人で、高齢者は少ないです。
発熱、倦怠感、頑固な咳嗽(がいそう)などが多く、長引く風邪の症状や咳が治らないことをきっかけに外来を受診されるケースがよくみられます。痰や分泌物が少ない「コホコホ」とした乾いた咳は、発症後数日で現れることが多いですが、時間が経過すると痰が混じった湿った咳に変化することもあります。また、マイコプラズマニューモニエの増殖スピードが肺炎を起こす他の細菌に比べてゆっくりのため、感染から症状が出現するまでの潜伏期間は2~3週間と比較的長めになります。
治療には抗菌薬を用います。「マクロライド系抗菌薬」が有効で、効果があれば3日程度で解熱してきます。一方で、2000年頃からマクロライド系抗菌薬が効きづらいマイコプラズマ肺炎が徐々に増えてきており、問題となっています。そのためマクロライド系抗菌薬を使っても良くならないときには、別の抗菌薬に変更する必要があります。このとき、「ニューキノロン系抗菌薬」や「テトラサイクリン系抗菌薬」が用いられます。
マイコプラズマ肺炎の診断後は外来治療が主となりますが、時に重症化することもあります。その場合には入院治療が必要です。重症例ではステロイドを用いたり、人工呼吸器による呼吸管理が必要となったりする場合もあります。
マイコプラズマ肺炎の初期としては、主に発熱、倦怠感や頭痛などが見られますが、これらは風邪の症状とも似ており、症状から明確に鑑別するのは困難です。
そのため、先述の症状を頭にとどめておき、気になったら受診をすることが早期発見につながります。そのほか、周囲にマイコプラズマ肺炎が流行しているか否かの情報も重要です。幼稚園や学校、職場などで流行しているときに先述のような症状が出現したら、さらに注意が必要です。
受診して医師がマイコプラズマ肺炎を疑ったときには、胸部レントゲン、血液検査などを行ないます。聴診では肺雑音が目立たないのに、胸部レントゲンではくっきりと肺炎の影が写ることがあったり、一般的な細菌性肺炎では上昇する血液中の白血球数が、あまり上昇しなかったりすることなども特徴です。そのほか、血液中のマイコプラズマニューモニエに対する抗体の上昇の程度を調べたり、のどの奥を拭った液を用いて行なう迅速診断や遺伝子検査も診断に役立ちます。
残念ながらマイコプラズマ肺炎に有効な予防接種はありません。マイコプラズマ肺炎流行の情報があれば、人が集まるような場所に行くことを避けたり、風邪やインフルエンザと同様、手洗いやうがいといった一般的な予防策をしっかりと行なったりすることが大切です。発症した人は、周りの人にうつしてしまわないように、マスクをして咳エチケットを守るようにしましょう。家族内で感染することも多いので、家族にマイコプラズマ肺炎の診断を受けた方がいる場合には、細菌が広がらないように特に注意が必要です。
解説:草ヶ谷 英樹
静岡済生会総合病院
呼吸器内科長
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