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2018.09.12
食べ物や飲み物、あるいは唾液などを飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。健康な人であれば、嚥下すると口から食道を通って胃に入っていきます。しかし嚥下機能が低下すると、食べ物などが口から気管に入ってしまいます。これが誤嚥(ごえん)です。誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで発症する疾患です。
図:誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎を起こすのは、高齢の人や、脳梗塞の後遺症やパーキンソン病などの神経疾患を抱えている人が多いです。また、口腔内に存在している細菌が原因であることが多いとされており、口腔内が十分清潔に保たれていない場合、肺炎の原因となる細菌がますます繁殖し、発症するリスクがさらに高まります。
典型的な症状として発熱、せき、濃い色の痰などが挙げられます。高齢者だとこれらの症状が現れにくく、普段より元気がない、ぼんやりしている、食欲がないといった症状だけが現れることもあります。
明らかに誤嚥や嚥下機能の低下がみられる人、繰り返し誤嚥性肺炎を発症している人は、胸部レントゲン検査で肺炎像が確認されると誤嚥性肺炎と診断されます。また、他の細菌性の肺炎と同様に、血液検査で白血球の増加や炎症反応の上昇がみられたときにも診断が下されます。
主に抗菌薬を用いた薬物療法が採用されています。しかし、抗菌薬は肺炎自体に効果がありますが、誤嚥を防ぐ効果はありません。治療後に再び誤嚥を起こすと、繰り返し発症する可能性があります。そのため、嚥下を行ないやすくするための手軽にできるストレッチの導入や、歯磨きをはじめとした口腔ケアなど薬物療法以外の治療、そして日頃のケアが重要になります。
高齢の人や脳梗塞の後遺症などの神経疾患を抱えている人、あるいは寝たきり症を患っている人は誤嚥を起こしやすいため、誤嚥性肺炎を発症しやすいといえます。このようなリスクを抱える人に発熱、せき、痰、呼吸困難など肺炎を疑う症状が現れた場合、誤嚥性肺炎である可能性が高くなります。
食事中にたびたびむせたり食後に痰が増えたりするなどの症状が現れる人は、特徴的なリスクがなくても誤嚥が起こっていることがあります。日頃の体調の変化に注意し、気になる症状が現れたらすぐ受診することで早期発見につながります。
嚥下機能の低下や気道の粘膜に付着する細菌が増加するのを防ぐため、禁煙はきわめて重要です。食事の前に、嚥下に関わる首や肩などのストレッチをするのも有効です。また、誤嚥のリスクが高い人は、食事のとき十分に上体を起こし、ゆっくりと咀嚼(そしゃく)・嚥下するように注意しましょう。嚥下機能の低下の程度を考慮して食事の摂り方を工夫することも大切で、食べ物を細かく刻んだり水分にとろみをつけたりすることが有効な場合もあります。
原因菌の一つとして肺炎球菌が関与していることもあるため、ワクチンを接種するのも効果的です。
解説:草ヶ谷 英樹
静岡済生会総合病院
呼吸器内科長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。