済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
腋臭症(えきしゅうしょう)、いわゆる「ワキガ」とは、わきから特有のにおいを発する状態のことを指します。
ヒトにはエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺があります。エクリン腺は全身の体表面に存在し、サラサラとした汗を分泌します。この汗は99%が水分で、蒸発しやすいので拭き取ればにおいはあまり気になりません。一方、アポクリン腺はわきの下や陰部、耳の穴など特定の部位に存在し、たんぱく質や脂質を含んでいるベタベタとした汗を分泌します。ワキガの原因となるのは、アポクリン腺から出るベタベタした汗です。この汗に含まれる皮脂(低級脂肪酸)を体表面の細菌が分解するときに、強いにおいを発します。アポクリン腺は第二次性徴で発達するので、症状が出るのは主に思春期ごろからです。
エクリン腺とアポクリン腺
自覚症状と他覚症状に差が出る場合もあり、自分で気になって受診したが実際にはそれほどにおわない、自覚症状がなくても他人の勧めで受診したらワキガと診断される、といったこともあります。原因ははっきりとしませんが、においがあまり強くない人ほど自覚症状が強くなる傾向があります。
受診する患者さんは、思春期~40代の女性が主です。高確率で遺伝するといわれており、ワキガの症状がある親御さんが、同じく症状が出た思春期の娘を連れて来院することも少なくありません。
また、ワキガに悩む方は多汗症でもあることが多く、においだけでなく汗の量も気になって来院する、という患者さんもいます。
病院へ相談に来る患者さんの多くは、薬や手術などの治療を希望されます。しかし、治療をしなくても生活習慣の中に対策を取り入れるだけで解決することも多いのだとか。まずは日々の生活でできる対策をご紹介します。以下のようなケアをして、わきを清潔に保ちましょう。
・ こまめにシャワーを浴びる
・ 除毛する
・ アルコール綿で拭く(肌が弱い人には向いていないが、一度拭くと効果は約12時間持続するといわれている)
においが気になって市販の制汗剤を使う人がいますが、汗をかいた状態で制汗剤を使用しても効果はありません。市販されているアルコール綿でいいので、細菌や分泌物を取り除きわきを清潔に保つことを心がけましょう。
また、普段の食事や生活リズムなども影響します。当てはまる点はないか、振り返ってみましょう。
・ 脂っこいものを多く食べている
・ 睡眠不足
→どちらも汗がにおいやすくなる原因です
・ においがこもりやすい化学繊維の衣類を着ることが多い
→綿など天然素材の衣類を着る
においが気になる人は、自分の生活を見直してみると解決の糸口が見つかるかもしれません。
治療が必要かをどう判断するのか、どのような治療法があるのか、皮膚にまつわる外科「形成外科」を設置している神栖済生会病院の例を紹介します。
同院では、まず治療が必要かをチェックします。「他の人からにおいについて指摘されたことがあるか」「家族に同じ症状がみられる人はいるか」などと問診するほか、ガーゼを使った簡単なチェックを行ないます。これは、問診を始めるタイミングで両わきあるいは片わきにガーゼを挟み、問診が終わるときにガーゼを受け取ってにおいを確認するものです。これらの要素から、治療が必要かどうかを判断します。
治療法には、塗り薬による治療と外科的治療があります。
塩化アルミニウム液の処方は保険適用外となるため、自費負担である点に注意してください。
外科的治療としては、アポクリン腺を切除する「皮弁法」という手術があり、同院の形成外科でも採用しています。この治療は保険が適用され、日帰りできるのが特徴です。手術の詳細は以下のとおりです。
手術内容
術後の流れ
- 手術当日
手術が終わったら、処方される内服薬(抗生剤、鎮痛剤)を飲みます。- 手術翌日
通院します。医師が傷の状態や痛み、腫れを確認し、血抜き用の管を取ります。傷に問題がなければ、コルセットで1週間固定し続けます。- 手術から3日後
痛みや腫れの悪化を防ぐため、この日までは飲酒や運動、入浴を控えましょう。- 手術から7日後
通院します。傷口を圧迫していたガーゼを取ります。以後はコルセットを外しても構いませんが、腕を上げるなどの動作は控えましょう。この日からシャワーで洗えるようになります。優しくすすぎ、処方された塗り薬をつけたらガーゼで患部を保護しましょう。- 手術から14日後
通院します。抜糸して傷の状態を確認し、問題がなければ通院が終わります。
注意点
手術に伴って次のような症状が現れることがあります。感染症などの可能性もあるので、症状が現れたら早めに医師へ相談しましょう。
- 痛みが続く
- 傷口が開く
- 傷口の周りの皮膚が壊死する
- 患部に血だまりができる
「においが気になるので治療を考えている」という人は、お近くの皮膚科または形成外科を受診してください。手術でアポクリン腺の切除を希望する人も、まずは診察が必要なので医師に相談してみましょう。
解説:有馬樹里
神栖済生会病院
形成外科医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。