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2023.03.01
多汗症は、発汗時に必要以上の汗が出てしまい、症状の程度によっては日常生活のさまざまな場面で支障をきたします。
多汗症には、全身に発汗が多くみられる「全身性多汗症」と、手のひらや足の裏、脇、顔、頭部など身体の一部で発汗が多くみられる「局所性多汗症」があります。
神経障害や感染症、内分泌代謝異常、精神的緊張など原因となる病気がある場合(続発性)と、原因が不明の場合(原発性)に分けられます。
以下、主に原発性の局所性多汗症について説明します。
多汗症は汗が多く出るのが特徴ですが、発汗の程度は個人差が大きいです。
例えば手のひらに多く汗をかくタイプであれば、少し汗ばむ程度から、ノートに汗が滴り落ちて字が書けなくなるものまでさまざまです。
また、脇の汗の場合には汗による湿気が原因となり、皮膚表面の細菌が増えて不快な臭いのもとになることがあります。
睡眠中は発汗がおさまっていることが多いです。
患者さんの病歴や汗の出る範囲などを問診します。
原因となる病気がなければ原発性の多汗症と診断します。
現在治療方法が進んでいるのは、脇の汗が多いタイプの治療です。軽症であれば、副交感神経の働きを抑える抗コリン剤を塗ります。発汗によって日常生活に頻繁に支障が出るようであれば、脇にボツリヌス毒素の皮下注射を行ないます。両脇に数十カ所注射しますが、外用局所麻酔薬などで注射の痛みは緩和することができます。注射後の翌日あたりからすぐ効果がみられ、1回の投与で6~12カ月ほど効果が持続します。即効性があり満足度の高い治療です。
まずは年に1回、初夏の前に投与して、夏が過ぎて涼しくなった頃に発汗が気になるようなら追加の投与を行ないます。
全身性多汗症の治療では、抗コリン剤を内服します。抗コリン剤は副作用として便秘になることがあり、投与量の調整や便秘薬の酸化マグネシウム製剤などを併用する場合があります。緑内障や前立腺肥大症の患者さんは、抗コリン剤を内服することができません。
思春期に多くみられる手のひらの多汗症の場合は、水道水を使ったイオントフォレーシス(汗の多い手のひらや足の裏を水道水の入った容器に浸して10~20mAの電流を流す治療法)が効果的です。ただ、定期的に通院して治療する必要があり、忙しい学生さんなどでは困難な治療です。ほかには抗コリン剤の内服や塩化アルミニウム液を塗る治療法があります。
早期症状は特にありませんが、以下のような自覚症状がある場合は、皮膚科などを受診するようにしましょう。
・温度差の変化で多量の汗をかく
・緊張すると多量の汗が出る
・手のひら、足の裏、脇などが汗ばんでいることが多い
・手の汗で本やノートが濡れる
残念ながら多汗症の予防法はありません。ただ、続発性の多汗症の場合は、原因となる病気を治療することで多汗症の予防につながることがあります。
解説:松本 賢太郎
静岡済生会総合病院
皮膚科部長
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