社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.02.05

急性硬膜下血腫

acute subdural hematoma

解説:丸山 邦隆 (富山病院 脳神経外科)

急性硬膜下血腫はこんな病気

頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)と脳の間に出血が起こり、そこに出血した血液が急速にたまることで、脳を強く圧迫する状態です。あらゆる年齢層に起こりえますが、高齢者に多いのが特徴です。

正面から見た脳の断面

急性硬膜下血腫の原因

ほとんどが頭部外傷によるものです。外傷により脳が傷ついて脳挫傷となり、そこからの出血により引き起こされます。また、脳の損傷が強くなくても頭部に大きな力がかかって脳の表面の血管が傷つき出血することで、急性硬膜下血腫をきたすものもあります。
急性硬膜下血腫は、強い頭部外傷により引き起こされるため、脳の損傷に伴い、受傷直後から意識障害がみられます。ただし、脳血管のみが傷つき、脳自体の損傷がない場合には、発症初期は意識障害がみられずに、徐々に意識障害が出現してくることがあるので注意が必要です。

急性硬膜下血腫の診断

通常、頭部CT検査により診断します。急性硬膜下血腫は脳の表面に広がるのが特徴で、CT画像では脳の表面に白い三日月型の血腫がみられます。
血腫による脳の圧迫が強い場合は、救命のため、緊急手術にて血腫を除去し、脳の圧迫を解除する必要があります。圧迫が強くない場合も、血腫が増大することで意識障害がさらに悪化する可能性があり、厳重な管理を行なう必要があります。

急性硬膜下血腫の治療

手術の方法は、全身麻酔下に行なう開頭血腫除去術です。大きく頭の骨を外し、血腫を除去し、どこから出血しているかを確実に判断して止血を行ないます。脳の損傷がひどく、脳腫脹(脳全体が腫れた状態)が強い場合は、外した骨を戻さずに皮膚を縫合する外減圧術を併用する場合があります。
全身麻酔による開頭術では間に合わないような場合や、患者さんの全身状態が悪くて全身麻酔に耐えられないような場合は、局所麻酔下で小さく開頭して血腫除去を行なうこともあります。
急性硬膜下血腫の予後(発症後の見通し)は意識障害の程度と関係しています。手術した場合の死亡率は65%と高く、その一方で、社会復帰できる人は18%と報告されており、予後が非常に悪い外傷です。

頭部外傷後、意識障害が出現した場合には、速やかに救急車を呼んで脳神経外科のある病院へ搬送してもらい、診断と治療を受けることが必要となります。

頭部外傷後の意識障害には注意が必要です。

解説:丸山 邦隆

解説:丸山 邦隆
富山病院
脳神経外科


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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