社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.01.25

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)

shaken baby syndrome

解説:摺木(するき) 伸隆 (川内病院 小児科部長)

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)はこんな状態

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)は、赤ちゃんを激しく揺さぶることで、表面的な外傷はないものの、赤ちゃんの脳に重度の損傷が生じることをいいます。
親やその他の養育者が子育てのストレスから自制心を失って、赤ちゃんを泣きやませようと強く揺さぶってしまうことが乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)が起こる主な原因です。そのため赤ちゃんがなかなか泣きやまないときに起こりやすいといわれています。

赤ちゃんは首の筋肉がまだ弱く、身体の割合に対して頭が大きいという特徴があります。激しく揺さぶられることで、大人に比べて頭が大きく揺れ動き、頭部に大きな力がかかってしまいやすいです。
もっとも、普通に赤ちゃんをあやしている分には、乳幼児揺さぶられ症候群になることはありません。

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の症状

脳神経細胞が障害を受けたり、頭蓋内の出血が起こったりすることにより、意識障害(目線が合わない、ぐったりしている、うとうと眠っていることが多い)、繰り返す嘔吐けいれん、視力障害などさまざまな症状が起こります。

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の検査・診断

硬膜下血腫、眼底出血がみられることが多いといわれており、乳幼児でそのような所見があった場合に乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)を疑います。
脳神経細胞の障害や頭蓋内の出血の状態を調べるために、頭部CT、MRI検査を行ないます。
また、眼底出血が起こっていないかを見極めるために、眼底カメラで出血の様子を確認するなどの検査も行ないます。

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の治療法

硬膜下血腫に対しては、頭蓋骨を大きく開けて血腫を除去する開頭血腫除去術を行ないます。急性の脳腫脹(脳全体が腫れた状態)がみられるときには、腫れた脳の圧を逃がすために骨を外して皮膚だけ縫合する外減圧術を併用する場合があります。
眼底出血は自然に消えていきますが、弱視になったり重い視力障害が残ったりすることがあります。

赤ちゃんが激しく揺さぶられた際は、すぐにかかりつけの小児科医や救命救急センターで診てもらいましょう。揺さぶられて脳に損傷が生じた場合、治療をせずに放っておくと症状が悪化してしまいます。すぐに受診することが大切です。

昨今の核家族化や、新型コロナウイルス感染症の流行などで人と関わりが希薄になっており、子育てをする親やその他の養育者が孤立しやすい状況になっています。その結果、子育てのストレスを抱えてしまい、赤ちゃんが泣きやまないときに揺さぶりたくなる衝動が起こるリスクが高まると危惧されます。

赤ちゃんは泣くことが仕事です。なかなか泣きやまないときには、おむつを替える、ミルクをあげてみる、優しく抱っこしてみる、痛いところがないか観察してみる、暑すぎたり寒すぎたりしないか確認する、といったことを試してみましょう。それでも泣きやまず強いストレスを感じたときは、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、大人が冷静になるためにその場を離れることも必要です。もしくは、かかりつけ医や自治体などに相談するのもよいでしょう。赤ちゃんを育てる大人の心の安静を保つことが大事です。

解説:摺木(するき) 伸隆

解説:摺木(するき) 伸隆
川内病院
小児科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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