社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.07.12

脳挫傷

brain contusion

解説:井口 雅博 (水戸済生会総合病院 脳神経外科 主任部長)

脳挫傷はこんな病気

脳挫傷は頭部への直接的な打撃や激しい揺れにより、脳そのものが損傷した状態です。衝撃を受けた側の脳だけでなく、反対側の脳にも損傷が現れることがあります。

損傷を受けた脳の部位で機能障害が起こるほか、脳腫脹(脳が腫れた状態)を強く伴う場合は、生命に危険が及ぶこともあります。また、急性硬膜下血腫急性硬膜外血腫など、他の外傷を合併することもよくあります。

脳挫傷の症状

頭痛、気分不快など軽度のものから、麻痺、言語障害(失語症など)、意識障害など重篤なものまで、損傷の部位と大きさにより出現する症状や程度はさまざまです。
脳挫傷に伴う進行性の出血や脳浮腫が増大することで、症状が悪化する場合もあります。

脳挫傷の検査・診断

診断はCTやMRIなどの画像検査で行ないます。CT画像は、脳の腫れや壊死によって黒っぽく見える部分に、白く見える出血が混ざっているのが特徴です。出血が多くなってたまってくると、脳出血がみられる場合もあります。

脳挫傷の治療法

損傷した脳の腫れが大きくなってきたり、脳内の出血が多くなってきたりした場合は、周辺部位の脳障害の予防や生命を救うことを目的に、手術が必要になる場合があります。
ただ、重症の脳挫傷では手術を行なっても、損傷した脳の機能障害により後遺症が残ることが多く、脳の腫れや出血の程度によっては救命が困難な場合もあります。
また、脳に損傷が残り、後にてんかんを発症することもあります。

頭部打撲などの外傷後に以下のような症状がみられる場合は、すぐに救急病院を受診してください。症状や受傷の原因によっては、救急車を要請することも大切です。

○ 激しい頭痛
○ 気分不快
嘔吐
意識障害
○ 麻痺

頭部外傷を起こさないように予防することが大切です。
自動車に乗る際のシートベルト着用、幼児のチャイルドシート利用、自転車に乗る際のヘルメット着用など、頭部の保護を心がけてください。
高齢者の転倒、階段などからの転落事故で発症することも多くなっています。転倒予防のため、家の中に手すりをつけたり、屋外では杖やシルバーカーを使用したり、脚立など不安定なものの使用を制限したりすることが重要です。階段を使わなくてもすむよう、生活環境を整えるなどの対策も有効です。

解説:井口 雅博

解説:井口 雅博
水戸済生会総合病院
脳神経外科 主任部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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