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2024.02.21
局所性脳損傷は、転落や交通事故などで頭部に外から強い力が加わり、脳に出血を含む傷が加わった病態です。受傷部位と脳の出血による圧力上昇の関係によって、意識障害や麻痺、言語障害など局所性脳損傷に特有の神経症状が現れます。大量出血で脳を強く圧迫する場合は、救命のために緊急手術を行ないます。
局所性脳損傷には、「脳挫傷」「急性硬膜外血腫」「急性硬膜下血腫」「外傷性脳内血腫」の四つの病態があります。
さまざまな程度の意識障害を中心に、麻痺や言語障害などが症状としてみられます。具体的には以下のような症状が現れます。
脳挫傷
頭痛や気分不良などの軽症から、麻痺、言語障害、意識障害など重篤なものまであります。頭部打撲後に遅れて気づくこともあります。
急性硬膜外血腫
受傷直後は意識障害がないか、あっても症状は軽いですが、血腫が増大することで後から頭痛や嘔吐などの症状が現れ、その後、意識障害や麻痺などの神経症状が徐々に悪化していく場合があります。
急性硬膜下血腫
多くは受傷直後から意識障害がみられますが、急性硬膜外血腫のように、発症初期は意識障害がみられず徐々に意識障害が出現してくることもあります。
外傷性脳内血腫
受傷直後からさまざまな意識障害が起こり、血腫の部位によって麻痺や言語障害が加わります。
診断は頭部のCTやMRIなどの画像検査によって行ないます。また治療法としては、四つの病態いずれも血腫が多かったり脳の圧迫が強かったりする場合は、開頭手術を行ないます。
検査・診断 | 治療法 | |
---|---|---|
脳挫傷 | CTでは出血混じりの病変として描出される。病状が落ち着いた頃にMRIで詳しく脳挫傷の範囲を調べることもある | 損傷した脳の腫れが大きくなってきたり、脳内の出血が多くなってきたりした場合は、全身麻酔下で開頭血腫除去術を行なう。損傷した脳の切除を追加することもある |
急性硬膜外血腫 | 頭部CTで、頭蓋骨骨折(線状のひびが入った状態)の下に凸レンズ状の血腫がみられる | 血腫が厚かったり血腫量が多かったりする場合は、全身麻酔下で開頭血腫除去術を行なう |
急性硬膜下血腫 | CTでは脳の表面に白い三日月型の血腫がみられる。血腫は頭を打った側と反対側に出現することが多くみられる | 血腫が多い場合は、全身麻酔下で開頭血腫除去術を行なう。大きく頭の骨を外し、血腫を除去する。脳の腫れが強い場合は、外した骨を戻さずに皮膚のみ縫合する外減圧術を併用する場合もある |
外傷性脳内血腫 | 脳挫傷と同様にCTで脳内に出血が白く描出される。病状が落ち着いた頃にMRIで脳損傷の範囲を詳しく調べることもある | 血腫が多い場合は、全身麻酔下で開頭血腫除去術を行なう。損傷した脳の切除を追加することもある |
頭を打った際に、激しい頭痛、気分不良、嘔吐、一時的または継続的な麻痺がみられるようであれば、意識があってもすぐに救急病院を受診してください。
また、外傷当初は症状がなくても、徐々にボーッとしてくる状況であれば、緊急手術を必要とする状況の可能性があります。早急に救急病院を受診してください。
交通事故や転倒・転落の予防が最も大切です。特に高齢者の運転や高所での作業(脚立など)には十分注意し、家族が見守るなどの配慮が必要です。
高齢者で抗血栓薬(いわゆる血液をサラサラにする薬)を内服していたり、水頭症の治療でシャント手術を受けていたりする場合は、通常の人よりも頭部打撲により脳が出血しやすい状態です。中程度の頭のけががあれば、病院の受診を考慮してください。
解説:山城 重雄
済生会熊本病院
脳神経外科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。