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2013.12.02
肝臓には、人が生きるために必要なタンパク質や脂肪成分、糖などを作り出す機能や、体に不要となったものを解毒して体外に排出する作用があります。例えるならば、人が生きていくための化学工場のような役割を果たしています。そのような肝臓の機能が、いろいろな原因で不完全となり、さまざまな症状が出現することを肝不全といいます。
具体的には以下のような症状が現れます。
1 腹水(ふくすい)
血液中のさまざまな物質を運んだり、体液の濃度を調整するアルブミンというタンパク質があまり作れなくなるため、水が血管の外に漏れ出やすくなり、お腹の中にたまってしまいます。
2 肝性脳症
腸の中で発生するアンモニアが肝臓から排泄(はいせつ)されなくなったり、アミノ酸のバランスが悪くなったりすることで脳に影響が及び、手が震えたり、おかしな行動を取ったりします。
3 食道胃静脈瘤破裂(しょくどういじょうみゃくりゅうはれつ)
腸管から肝臓に流れ込む「門脈」という血管の圧力が高くなり、血管が破裂して突然吐血することがあります。
4 感染症
腸管の細菌が血液中に移行しやすくなり、感染症が起こりやすくなります。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれています。再生能力・代償能力に優れているため、ダメージを受けても、残った正常な細胞が代わりに働いて機能を維持してくれます。自覚症状がないまま何十年とかけて肝臓が傷んでいき、症状が出現したときには、すでに病状がかなり進んでいるのです。長い年月をかけて進行するため、日常生活では気づきにくく、会社の健康診断などで肝障害が指摘されたときに治療が必要かどうかの判断を受けることが大事です。会社に勤めていない自営業の方や主婦の方も、健康診断を受けることが早期発見の第一歩となります。
肝不全の原因となり得る疾患は、2008年の全国集計によると、C型慢性肝炎が約60%、B型慢性肝炎が約15%、アルコール性肝障害が約15%と、3つの原因で全体の90%を占めています。その他考えられる原因としては、原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)、自己免疫性肝炎、NASH(ナッシュ/非アルコール性脂肪肝炎)などがあります。特にNASHは近年増加してきています。採血をしてウイルスの有無をチェックしてもらうことが必須といえるでしょう。また、肝障害がある場合は腹部エコー検査やCT検査を受け、形態の変化がないか調べてもらう必要があります。
予防のためには、まず肝障害の原因を調べて治療を受けるということにつきます。対処方法は肝障害の原因によってそれぞれ異なります。
C型慢性肝炎は、肝がんが発症したり、肝不全が進行して亡くなる患者さんが多かったのですが、現在では完治できる病気となりつつあります。2013年11月時点では、インターフェロン(免疫系や炎症に作用して効果を発揮する)という注射と、内服薬2種類を併用することによって、80~90%の患者さんが完治しています。
B型慢性肝炎は、1986年から、ウイルス感染の予防に役立つ免疫グロブリン製剤とワクチンを使用することによって、母子感染をほぼ防ぐことができるようになりました。また、B型慢性肝炎の中では、肝臓に最も多く存在している酵素であるGPT(ALTとも表記される)の数値が高い人と、ウイルス量が多い人は、高確率で肝硬変や肝がんに進行しやすいということが分かっています。その場合、ウイルスの増殖を防ぐ核酸アナログという飲み薬を使用することによって、進行を抑えられます。そのため、以前と比較すると肝不全となる可能性は非常に低くなっています。
そのほかさまざまな疾患が原因となり得るため、その疾患に応じた治療が必要といえるでしょう。
解説:森園 周祐
福岡総合病院
肝臓内科部長
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