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2013.02.01
肝機能障害とは、肝臓の機能が障害されている状態をいいます。多くの場合、血液の肝機能検査で異常値を示している場合に肝機能障害といいます。
肝機能障害の主な原因は、B型・C型肝炎ウイルスによる肝炎や、アルコールの長期摂取によるアルコール性肝障害、薬剤の服用によって起こる薬物性肝障害、自己免疫の異常による自己免疫性肝障害などさまざまです。
アルコールや炎症などで長期間にわたって肝細胞が壊されると、正常な肝細胞は少しずつ減り、線維が増え続けていきます。肝臓の病気は、なにが原因であっても、病態が慢性に進行すると最終的には肝硬変から肝不全に行き着きます。ただし、肝硬変になるスピードは肝臓の壊れ方によって異なります。例えば、C型肝炎のように20~30年かかって徐々に肝硬変に向かっていく場合もあります。肝硬変ではありませんが、劇症肝炎などは肝臓が一気に壊れて1~2週間で死亡したりします。
アルコールを飲んでいなくても、肥満の人は肝機能障害を認めることが多く、糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併している人ではその傾向が強く見られます。
1 倦怠感(疲れて食欲がなくなるなど)
2 黄疸が出る
3 腹水がたまる
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、初期の段階ではほとんど症状が出てこないのが大きな特徴です。病態がある程度進行したり、急性肝炎を発症した場合には倦怠感が出てきます。また、肝硬変が悪化して肝不全になると、黄疸が出たり、腹水がたまったりします。風邪をひいたり、夏バテをしたりすると、疲れて食欲がなくなるという経験はだれでもありますが、血液検査をしてみたら、肝機能に異常値が見られるということもしばしばあります。自分で健康と思っている人のおよそ3割は健康診断で肝機能障害が見つかるともいわれています。
なお、肝臓は全体の3分の1の大きさになっても生きていけるほど強力な再生力と予備能力を持っています。
血液検査で肝機能を調べます。肝機能障害が判明したら、次に原因を調べます。最終的には肝生検といって肝臓に針を刺して組織を調べて診断する場合もあります。
治療は、原因によって異なりますが、アルコールの摂取量を減らしたり、体重を減らすなど、まず生活習慣を改善する必要があります。B型・C型肝炎であればインターフェロンなどによる抗ウイルス治療が行われます。B型・C型肝炎は、放置すると肝がんが発生する可能性があるので、治療後も定期的に検査を受けることが重要です。
一般的な肝機能検査としてはGOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTPなどがあります。
GOTは心筋、肝臓、脳に高濃度に存在する酵素で、臓器が障害を受けると血液中に増加します。肝臓・胆道系の病気でGOTは増加しますが、 GPTと組み合わせることでさらに正確な診断が可能です。
GPTは肝臓に最も多く存在している酵素で、肝臓疾患の診断には欠かせない検査の一つです。腎臓にも肝臓の3分の1ほど存在していますが、その他の臓器にはあまり存在しません。GPTは肝細胞の壊れ方の悪化、改善の目安となります。
γ-GTPは胆道系の細胞に広く分布する酵素です。慢性肝炎、 肝がんなどで増加することが知られています。また、アルコール性肝疾患の場合に比較的鋭く反応し、指標として、また禁酒・節酒の効果判定に役立ちます。
ほかに、肝機能検査にはALP、ZTT、TTT、血清ビリルビンなどがあります。
現在肝炎ウイルスはA型~G型までが報告されていますが、一般的にはわが国ではA型、B型、C型が主体です。
A型肝炎ウイルスは食物を介して経口感染します。これに対して、B型、C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。
C型肝炎ウイルスはいったん感染すると慢性肝炎に移行しやすいといわれています。
わが国ではB型肝炎ウイルスを持っているのは約150万人、C型肝炎ウイルスを持っているのは約200万人といわれます。つまり国民100人あたり3~4人が肝炎ウイルスを持っていることになります。
解説:塚田 信廣
東京都済生会中央病院
副院長
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