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2013.02.01
椎間板ヘルニアの椎骨の断面
背骨は33個の椎骨がつながってできており、椎骨と椎骨の間には「椎間板」があります。椎間板は「線維輪」という壁に包まれて「髄核」という柔らかい物質が詰まったクッションのような組織で、背骨にかかる衝撃を和らげる役割を果たしています。ところが、この髄核が中から飛び出してしまうことがあります。すると、背骨の内部のトンネル(脊柱管)を通っている神経が圧迫され、さまざまな症状が出ます。これが、椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアは、背骨の中でも腰に生じやすいのが特徴で、腰から下方に走る神経に障害が起こると、足の痛み、しびれ、麻痺が生じます。重症化すると、膀胱・直腸の神経が圧迫され、大小便のコントロールができなくなることもあります(膀胱直腸障害)。
椎間板ヘルニアの起こり方には2通りあります。激しいスポーツをしたときや重い物を持ったときなどに、椎間板に強い圧力がかかることで中の髄核が飛び出して起こります。急激な痛みを伴います。これに対し椎間板の老化が原因で起こる場合があります。年齢とともに椎間板の水気が少なくなってクッションが弱くなり、例えば中腰の姿勢や長時間のデスクワークなどによってヘルニアが発生します。
痛みがひどいときは、まず安静にします。コルセットで固定することもあります。痛みをおさえるには鎮痛剤を使います。また、神経の腫れにはビタミンB12を、さらに、筋肉の腫れが強ければ筋弛緩剤を組み合わせます。鎮痛剤で痛みがとれない場合は、腰の神経に直接局所麻酔剤を注射する「神経根ブロック」という治療法などもあります。
それでも症状が改善されず、日常生活に支障をきたすようであれば、飛び出した髄核を摘出する手術も考えられます。専門医とよく相談することが大切です。
・腰の張り・重さ、腰痛
・脚の痛み、しびれ
・足首、足指が動きにくくなる
椎間板の老化が進んでくると、①腰が張る、重い、②軽い腰痛などの症状が出てきます。
このときに無理をすると、ヘルニアになることがあります。
腰のヘルニアでは足のしびれが生じやすく、一般的に膝から下の部分、特にふくらはぎの外側や足の裏がしびれることが多いようです。正座をした後のようなしびれのほか、突っ張る、足が張る、膝の裏が張って歩きにくい、など、症状は人によりさまざまです。腰の痛みがなく、足だけに痛みが生じることもあります。
しびれは感覚神経が圧迫されることによって生じますが、運動神経が圧迫されると、運動麻痺が起こります。運動麻痺は足先に生じやすく、足首が動かない、足指を反らせることができない、などの異変が生じます。スリッパが脱げやすい、小さな段差につまずきやすい、といったことがきっかけで発見されますが、これはヘルニアがかなり進行した状態と考えられます。
腰痛があるときは、腰に負担をかけないこと。中腰の姿勢は特に負担がかかるので避けましょう。また、腰かけるときは背もたれがある椅子にしっかりと腰を下ろし、クッションを腰に当てて腰骨の角度を保ちます。こうした心がけで、椎間板の内圧をおさえることができます。
椎間板ヘルニアの症状は、基本的には安静にしていればそのまま治っていくことが多いようです。しかし、無理をして身体を動かしたりすると、過敏になった神経がさらに刺激を受け、症状が悪化することもあります。痛みが数日で治まったからといって注意せずにいると、いつのまにか症状が重くなっているケースもあります。
腰に痛みや違和感があれば、整形外科を受診することをお勧めします。
背骨を支える体幹の筋肉を鍛えると効果がありますが、やりすぎるとかえって症状が悪化することもあるので注意が必要です。スポーツ選手が行なうような筋肉トレーニングは、椎間板に負荷がかかりすぎます。腰に痛みが出ない範囲で運動しましょう。
どうしても運動を積極的に行なうなら、水中歩行がお勧めです。椎間板の負担を減らしながら、抵抗運動を行なうことになるので、水流によるマッサージ効果も期待できます。力がついてきたら、水泳にステップアップします。のけ反る動きのある平泳ぎやバタフライは腰を痛めるので、クロールや背泳ぎがよいでしょう。
解説:手塚 正樹
東京都済生会中央病院
整形外科
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