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2021.07.28
胸郭出口症候群は、手がしびれたり、腕に力が入りにくくなる神経の病気の一つです。
胸郭出口は首と胸の間にある通路です。脳から伸びる神経が、頸椎から肋骨と鎖骨の間を抜け、脇の下を通って腕に行きます。首から脇の下に抜ける際に神経が圧迫され、症状が出るのが胸郭出口症候群です。
主な圧迫カ所は、首の横の筋肉である斜角筋(しゃかくきん)の間、肋骨と鎖骨の間、脇の下になります。
腕や手がしびれる病気としては、頸椎椎間板ヘルニアなどで頸椎に病変がある場合や、手首の神経が圧迫される手根管症候群、肘の内側で神経が圧迫される肘部管(ちゅうぶかん)症候群などがあり、これらとの鑑別が必要です。
腕や手のしびれや疼痛、筋力低下がみられます。ゆっくりした経過で出現することが多いです。
姿勢によって症状が変動することがあります。例えば、腕を上げ続けたり、逆に腕を垂らしていたりすると症状が出ることがあります。また、首や肩周囲の疼痛やこりを自覚することがあります。
この病気を特定する簡便な検査法はなく、同じような症状を引き起こす他の病気を除外していくことが大事です。頸椎や肘、手首での末梢神経障害については、MRIや神経のスピードを測定する検査(電気整理検査)が有用です。
また、頸肋(けいろく=胎生期の異残物で首の側面に伸びたもの)と呼ばれる余分な肋骨の有無や、鎖骨の異常の有無などを調べるために、X線検査を行ないます。
胸郭出口症候群が強く疑われる場合は、神経と一緒に走っている血管の圧迫を調べるために、血管造影検査(カテーテルから血管に造影剤を注入して血管の状態を調べる検査)を行ないます。
日常生活で症状が出る姿勢を避けることが重要です。そのためには、どういう姿勢で症状が出るかを理解することが大事です。
猫背が原因となる場合もあり、胸を張って姿勢をよくすることで、改善することもあります。また、運動も効果的です。腕を動かすことで、神経の圧迫が改善する場合があります。姿勢を改善しても症状が持続する場合は、しびれを緩和する薬を飲んだり、神経が圧迫されている部位に痛みを和らげるブロック注射を行なったりする方法があります。
原因が明らかな場合は、手術で神経の通路を広げることがあります。具体的には、首の横の筋肉である斜角筋の隙間を広げる手術や、肋骨を切除する手術があります。
腕を持ち上げて、ぐーぱーを繰り返した際に、症状が強く出る場合、胸郭出口症候群の可能性があります。
腕や手の痛み・しびれが強くなってきたり長引いたりする場合、または力が入りにくくなったり、握力が落ちてきたりする場合には整形外科を受診し、原因を調べ、適切な治療を行なうことをお勧めします。
姿勢に気をつけましょう。パソコン業務を長時間していると、猫背になって、腕の位置が固定されてしまいます。普段から肩や腕をストレッチする習慣を持ちましょう。
解説:森崎 真介
滋賀県病院
整形外科副部長
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