済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
脊椎の構造
一口に腰痛といっても、その原因はさまざまです。脊椎(背骨)が原因で起こることもあれば、筋肉や神経、内臓、さらには、感染症やストレスが原因という場合もあります。ここでは、私たちの姿勢を支える脊椎が原因で起こる、腰痛のメカニズムについて解説します。
脊椎を構成する椎骨の間には、「椎間板(ついかんばん)」という柔らかい組織があります。椎間板は、椎骨と椎骨の間でクッションの役割をしています。赤ちゃんの頃は水分が80%以上含まれ、十分な弾力を保っていますが、20歳を過ぎたあたりから水分は徐々に減り、弾力が失われていきます。弾力が失われると椎間板は傷みやすい状態になり、急に重い荷物を持ち上げるなど無理な動作をきっかけとして、椎間板に傷がつき腰に痛みが発生します。また、椎間板に傷がつくことで、椎骨同士がぶつかり腰痛が起こることもあります。若い頃の感覚で腰に負担のかかる動きをすると、急に痛みを感じることがありますので注意しましょう。
腰痛を予防するためには、日ごろの姿勢や動作に注意することと、下半身を鍛えることが重要です。腰に負荷をかけないよう背筋を伸ばし、簡単なトレーニングを続けましょう。さらに、ストレッチを行なって足首の柔軟性を高めることによって、腰にかかる負担を分散させることができます。
猫背を改め、腰を曲げたまま重い荷物を持つといった、無理な体勢での動作は避けましょう。また、同じ姿勢を長時間続けないことも大切です。重い荷物を持ち上げる場合は、腰に負荷がかからないよう、膝を曲げた姿勢で、足の力を意識して持ち上げることがポイントです。
腰のトレーニングで大切なのは、毎日続けることです。寝る前にできる簡単なトレーニングを紹介します。1回3セット、つらくない範囲で続けていきましょう。
足首が柔らかくなると、腰にかかる力が分散し、負担が減ります。足首の柔軟性を高めるストレッチを普段の生活に取り入れることもおすすめです。1回5セット、身体が柔らかく、血液循環がよくなっているお風呂上がりに行ないましょう。
腰痛にトレーニングやストレッチは効果的ですが、腰痛を伴う病気は数多くあります。すぐ治るだろうと思って放置していると、実は重い病気が潜んでいることも。下表に腰痛を引き起こす病気の一例を示します。年代や性別によって起こりやすい腰痛もありますので、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
病名 | 解説 |
---|---|
腰椎分離症 | 椎骨の分離によって起こり、スポーツをする子どもに多くみられる |
脊椎すべり症 | 椎骨が前後にずれ、神経を圧迫する。足の痛みやしびれを伴う |
腰部脊柱管狭窄症 | 脊柱管が腰の部分で狭くなり、神経を圧迫する。加齢によって起こる |
椎間板ヘルニア | 椎間板内の髄核が外に飛び出し、神経を圧迫することで痛みが生じる |
急性腰痛症 | いわゆる「ぎっくり腰」。原因はさまざまで、慢性化することもある |
骨粗鬆症 | 女性ホルモンの分泌低下によって生じ、40代後半以降の女性に多い |
化膿性脊椎炎 | 細菌が脊椎に感染して起きる。中高年に多い |
脊椎カリエス | 「結核菌」が脊椎に感染して起きる。「化膿性脊椎炎」と似た症状が生じる |
間欠性跛行 | 動脈硬化や脊柱管内の神経圧迫によって起こる |
腰痛は、痛みに変化があったり、具体的な痛みの場所が明確に分からない場合がほとんどです。そのため、医師にかかる際は、自身の感じる痛みを正確に伝えることが大切です。医師が知りたいポイントもあるため、それらも伝えるとより診断がつきやすくなります。緊急性を伴う病気の可能性を判断するためにも、痛みの程度は細かく伝えるようにしましょう。
腰痛で伝えてほしい3項目
1.どんなきっかけでいつ痛み出したか
痛み出すきっかけがあったかどうかを伝えましょう。もともと痛かった状態が悪化した、という場合もあるでしょう。その場合は、そのことをそのまま伝えてください。また、痛み始めた時期がいつなのかも伝えます。時間とともに痛みが和らぐことが多いですが、長期間続く場合は、重い病気が潜んでいる可能性もあります。
2.どこが痛いのか
腰痛は、痛みの正確な場所が分かりにくいことがあります。背中まで痛みがある人や、お尻、ふとももにまで痛みを感じる人もいます。(1)ウエストライン、(2)ウエストラインからお尻まで、(3)太ももより下、と下半身を3つに分けたときにどのあたりが痛いのかを、おおよそでいいので伝えるようにしましょう。
3.痛みに変化はあるか
痛み始めてからその痛みが増しているのか、逆に楽になっているのかを伝えましょう。姿勢を変えることで痛みが軽減するかどうかも、診断に大きく関わります。姿勢によって痛みが軽減することがあるならば、生命にかかわる病気の可能性は低いといえます。
解説:新井 嘉容
川口総合病院
整形外科主任部長