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2016.06.13
化膿性脊椎炎や脊椎カリエスは、感染した細菌が血流によって脊椎(背骨)に運ばれることで化膿する病気です。半数以上は黄色ブドウ球菌が原因の化膿性脊椎炎です。結核菌の感染が原因である場合、化膿が起こる位置や症状が異なるため、脊椎カリエス(結核性脊椎炎)といって区別します。どちらの病気も40~50代に多いとされており、糖尿病、悪性腫瘍、肝機能障害、透析患者など、免疫力の低下している人に起こりやすい病気です。
急性の化膿性脊椎炎は、腰や背中の激痛や高熱などの症状があります。慢性の場合には、痛みは比較的軽いです。また、脊椎がつぶれたり、脊髄の周囲に膿がたまることで神経が圧迫され、下肢の麻痺が起こります。
脊椎カリエスは、微熱、食欲不振、倦怠感などの症状があります。化膿性脊椎炎に比べると腰の痛みは少なく、ゆっくりと進行します。しかし、ヒトは結核菌に対する抵抗力が弱いため、広範囲にわたって椎間板や脊椎の損傷が起こる可能性があるので、早期に発見し、治療をすることが大切です。
どちらの疾患も、背中をたたくと痛みが増します。また、通常の急性腰椎症は6~8週間程度様子を見れば痛みはおさまってくるものですが、これらの病気の場合は6カ月以上腰痛が続きます。
化膿性脊椎炎・脊椎カリエス
化膿性脊椎炎の治療は、感染している細菌を死滅させるために抗菌薬を使います。その後、安静にし、場合によっては入院して様子をみます。
脊椎カリエスは、結核菌の感染によって起こるため、抗結核薬による治療が行なわれます。
化膿性脊椎炎でも脊椎カリエスでも、神経症状がある場合や、脊椎の変形が進んでいる場合には手術が必要になります。
化膿性脊椎炎や脊椎カリエスにかかる患者は、糖尿病など免疫が下がる疾患に罹患している場合が多く、治療せずに放置していたり、傷があるとそこから細菌が感染しやすいので注意が必要です。また、ぎっくり腰などの痛みは、体勢を変えることで楽になることもありますが、この2つの疾患に関しては、脊椎の破壊が進行性なので、時間が経っても痛みがおさまることはありません。どんな姿勢にしても痛みがある場合は、この病気を疑い、整形外科を受診してください。
化膿性脊椎炎や脊椎カリエスは、早期に発見して治療をすれば、脊椎の損傷が軽度で済むため症状の悪化を防ぐことができます。また、糖尿病や悪性腫瘍など免疫を低下させる疾患が背景にあることが多いので、定期的に検査を受け、それらの疾患を発見することが重要です。病気以外に免疫力を低下させる要因として、加齢や過労、ストレスなどがあります。ストレスのかかる環境にいたり、不規則な生活を続けていると、細菌に感染しやすくなります。睡眠と食事をしっかりととり、体のコンディションを保つことがこれらの病気の予防につながります。
解説:新井 嘉容
川口総合病院
整形外科主任部長
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