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2016.05.06

脊椎すべり症

Spondylolisthesis

解説:新井 嘉容 (川口総合病院 整形外科主任部長)

脊椎すべり症はこんな病気

脊椎すべり症は、脊椎(背骨)を構成する椎骨がずれ、腰痛を引き起こす病気です。脊椎は、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎に分かれており、そのうち腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの、5つの椎骨によって形成されています。通常、椎骨は簡単にずれることはありませんが、椎間関節や椎間板が傷つくことでずれることがあります。

脊椎の構造と脊椎すべり症
脊椎の構造と脊椎すべり症

脊椎すべり症の種類

脊椎すべり症には、「形成不全性すべり症」「分離すべり症」「変性すべり症」の3つのタイプがあります。
形成不全性すべり症は、生まれたときから背骨の発育に問題がある先天性の脊椎すべり症で、非常にまれな病気です。
分離すべり症は、腰椎の一部が疲労骨折を起こす腰椎分離症が原因で骨がずれる病気です。腰椎分離症が第5腰椎で発症しやすいことから、分離すべり症も同じ場所での発症例が多くみられます。腰椎の形や、腰椎のアーチの角度には個人差があり、それによって分離すべり症を起こしやすい人と、起こしにくい人がいるといわれています。
変性すべり症は、3タイプの中で最も多いタイプです。好発部位は第4腰椎で、手術が必要な人も多くいます。変形すべり症は閉経後の女性に多く、女性ホルモンの減少による骨粗しょう症によって骨が体重を支えきれなくなり、引き起こされるといわれています。そのほかの原因として、椎間関節自体がずれやすい形をしていたり、加齢によって腰椎がもろくなったりすることで椎骨がずれるともいわれていますが、詳細はわかっていません。

脊椎すべり症の症状

症状は、下肢の痛みやしびれ、腰痛などです。また、脊椎すべり症によって脊柱管の狭窄が起こるため、神経が圧迫され間欠性跛行という症状が起こることもあります。これは、少し歩くと痛みで歩き続けることができなくなり、座って休むと痛みが和らぎまた歩けるようになるという症状です。進行すると日常生活に支障をきたすため、手術などの治療法を検討したほうがいいでしょう。

早期発見のポイント

脊椎すべり症は、3つのタイプによって発症の時期が異なります。先天性の病気である「形成不全性すべり症」は、比較的若い時期から症状が出ます。「分離すべり症」は、腰椎分離症が原因で起こります。そのため、10代の頃からスポーツに打ち込んでいた人や、以前に腰椎分離症を発症したことがある人は注意が必要です。「変性すべり症」は、閉経後の女性に多いことがわかっています。これらに該当する人で、腰痛や下肢のしびれを感じる場合は、整形外科に相談してください。

予防の基礎知識

脊椎すべり症は痛みが出ても、安静にしていたり、内服薬を使ったり、コルセットを装着したりすることで改善が期待できます。脊柱管狭窄症と同様に、下肢のしびれや痛み、間欠性跛行の症状が出ることがあるため、痛み止めのほかに血液の流れをよくする薬を使用することがあります。下肢の痛みが強い場合には、神経ブロック注射を行います。
これらの治療を行っても痛みが改善されない場合は、手術治療を考えます。手術には、主に以下の2つの方法があります。

手術治療
1 除圧術
椎骨のずれによって神経が圧迫されている状態のため、ずれている部分の骨の動きが小さい場合は、骨の一部を取り除いて除圧する。
2 固定術
ずれている部分の骨の動きが大きい場合は、除圧だけではなく、骨を固定して動かないようにする。

治療方法は、痛みの状態や患者がどんな生活を送りたいかによって変わります。医師に希望を伝え、治療法を相談することが大切です。

新井 嘉容

解説:新井 嘉容
川口総合病院
整形外科主任部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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