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産まれてすぐの新生児期から生後半年くらいまでは、母乳や粉ミルクを飲んで時間をあまり置かずに排便があります。生後1〜3カ月くらいになると水分を吸収する大腸の動きが発達してきて、うんちの水っぽさが段々減り、液体に顆粒状のものが混じった状態から、泥状のうんちへと変化していきます。色は明るめの黄色で、溜め込むとだんだんと色が濃くなっていきます。
あくまでも統計上ですが、粉ミルクだけを飲んでいる赤ちゃんは、母乳だけを飲んでいる赤ちゃんよりうんちが固く、回数も少なめのようです。臭いも違って母乳の方がすっぱい感じがするので、成分の違いによるものだと思われます。うんちの形状が「水みたい」「固すぎるかもしれない」と心配されるお父さんお母さんもいらっしゃいますが、母乳でも粉ミルクでも良し悪しはありませんから安心してください。離乳食がはじまると、うんちの状態は生クリームを絞り袋から押し出すような質感になり、それまでの水っぽい便に比べるとずいぶん固さが出てきます。
実は、新生児で便秘になる赤ちゃんはほとんどいません。本来なら母乳や粉ミルクを飲むほど排便も増えるはずなので、うんちの出が悪い場合は摂取量の問題と考え、まず母乳や粉ミルクをしっかりと飲めているか、体重は順調に増えているかを確認します。母乳や粉ミルクの量に問題がなければ、肛門近くの腸が細い「ヒルシュスプルング病」や先天的に肛門の位置がずれている「鎖肛(さこう)」といった外科疾患が考えられます。
便秘の症状が出てくるのは、早い赤ちゃんだと生後1カ月くらい。年齢が上がるにつれて、乳幼児健診にいらっしゃるお父さんお母さんから「うんちの様子が変わってきたんだけど大丈夫?」「回数が減ってきたけれど正常?」といった相談が増えていきます。この頃は、母乳や粉ミルクから離乳食になって食べるものの水分量が減ることに加え、大腸が発達して水分を吸収してくれるようになるので、うんちに含まれる水分量が減って固くなり、回数も自然に減っていきます。離乳食でお腹の中に固形物が入ることで、腸内環境が変わることも影響があります。
離乳食がはじまると便秘は増えるのですが、それでも、便秘になりやすい赤ちゃんの特徴はいまだにはっきりわかっていません。保育園・幼稚園や学校に通うようになっても便秘が慢性的に続くお子さんもいますから、いつから便秘の症状があったのか、子どもがどのような体質なのかを把握しておくことは、その後の治療を続けるうえでもとても大切です。
お子さんが便秘になりやすい時期が大きく分けて3つあります。1つ目は離乳食がはじまる時期、2つ目は3歳前後でされる方が多いトイレトレーニングのとき、そして3つ目が小学校へ入って集団生活の中でトイレに行かなければならなくなるときです。
便秘を避けるためには、赤ちゃんのうちにスムーズにうんちを出せる習慣をつくり、この3つのタイミングをうまく乗り切ることが大切です。うんちをするのは恥ずかしいことではないという認識を当たり前にして、痛くないという経験を重ね、苦手意識をなくしていきましょう。
便秘の定義は、うんちが週3回未満しか出ていない、または排便困難があること。排便困難とは、息みが激しかったり、肛門が切れることがある、あるいは、うんちがコロコロと固かったり、スムーズに出ない状態のことをいいます。毎日うんちが出ていても排便困難があれば便秘です。この定義は、赤ちゃんだけでなく、どの年齢にも当てはめていい基準だと思います。
相談に来たお父さんお母さんから「3、4日うんちが出ていない」と聞くと、まずは日頃の赤ちゃんの様子を聞いたり、観察をします。
こうした様子が見られる場合は、便秘によって赤ちゃんが苦しんでいるかもしれません。また、少し年齢が上がってくると、足をクロスさせてうんちを我慢しているお子さんもしばしば見かけます。うんちをすると痛いのが嫌で、出したくないために溜め込んで便秘になってしまうケースです。
また、できれば毎日排便があるのが望ましいですが、数日出ていなくても、赤ちゃんがご機嫌ならば、便秘の範疇に入れずに様子を見ましょう。うんちの色が濃くて腸に溜まっている様子があっても、必ずしも便秘とは限りません。逆に毎日出ていてもお腹がパンパンだったり、いつもうなっていたりすれば便秘の可能性があります。どのような場合でも、赤ちゃんの様子を見て、辛そうなときは迷わず病院に相談してください。
便意を一旦我慢すると遠のいてしまうのは、大人もお子さんも同じ。うんちをお腹にため込んだ状態が長引いたり、繰り返してしまうと、より重い症状につながってしまいます。
幼児期のお子さんでもよく見られるのは、「便塞栓」や「巨大結腸症」。レントゲン撮影をするとわかる便塞栓は、固いうんちがコルク栓のように腸に栓をしてしまう状態です。うんちは毎日出るけれど水便だけという場合は、栓の周りから水っぽい便(水様便)だけが漏れ出ている可能性があります。下痢止めを飲んでしまうと逆効果のため、注意深く診察する必要があります。また、うんちを我慢していると人間の直腸は自然と太くなって、ため込めるようになり、便意のセンサーが鈍くなってしまいます。そうした巨大結腸症の状態を治すには、回数や固さなどちょうどいいうんちができるよう排便コントロールしていき、便意のセンサーを戻していくことになりますが、その治療には最低でも半年かかります。
出したいのに出せない、やっと出せたと思ったら痛みなどがありまた出したくなくなる――そうした悪循環をつくらないために、赤ちゃんがうんちをため込まないよう対策することが一番です。
赤ちゃんの便秘には、オイルやワセリンを付けて滑りやすくした綿棒で肛門を刺激する「綿棒刺激」を産科で習います。ただ、生後3、4カ月になると体の動きも活発になり、処置が難しい場合は、新生児でも使える坐薬や、小児科でお薬をもらったり浣腸をして対処します。
赤ちゃんやお子さんの場合は、まずは体への負担が少ない整腸剤の服用から始めます。整腸剤だけでうんちが出るようになるお子さんも少なくありません。生後3、4カ月からは、浸透圧下剤が使えるため、腸に水分をひっぱってくるオリゴ糖や麦芽糖を使い、それで改善が見られない場合は酸化マグネシウムなどを処方して様子を見ます。
2歳からは「モビコール」というお薬が使えるようになります。最近日本でも導入されたもので、うんちを柔らかくしてかさを増やし、つるんと出やすくする効果が期待できます。そのほか、すぐに出してあげたいときや検査のため必要がある場合は、1〜5分ほどで排便がある浣腸を行なったり、エコー検査やレントゲン検査などで、腸の様子を調べたりすることもあります。
赤ちゃんが離乳食期に入っているならば、どんどん食べ進めてみてくださいとアドバイスします。うんちは、もとは食べ物ですから、便秘対策はそもそも必要な量を十分食べること、食べる種類を増やすことが大切です。大人が適度な運動をするのと同じように、ベビーマッサージなどもよいでしょう。
赤ちゃんのうんちの状態を見極めるときには、母子手帳に必ずついている「便色カード」も役立ちます。1歳前後になったら「排便日誌」をつけるのもおすすめです。便の形や色を記録していくと、お子さん自身だけでなく親も異変に気がついて、医師と共有できるのもよいポイントです。細かく記録しすぎるとお父さんやお母さんも大変なので、ストレスなく続けられるように簡単なメモ程度でも構いません。
赤ちゃんには“楽しいうんち時間”がなにより大事です。日々の様子をしっかり観察しながら、おむつ替えやトイレトレーニングも親子で楽しみながら行なうことが、成長してもスムーズに排便できる身体づくりにつながります。
参考サイト
■小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会:子どもの便秘 正しい知識で正しい治療を(詳細版)
https://www.himawari-life.co.jp/~/media/himawari/files/company/news/2019/a-01-2019-08-28.pdf
解説:藤野元子、吉田沙智恵
中央病院
小児科
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