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2018.06.14
一般に“みずぼうそう”と呼ばれている病気で、水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染したときに生じる急性の発疹症です。上気道から感染したウイルスが、体内で増殖することでウイルス血症を起こし、皮膚に発疹を形成します。
感染力がとても強く、おもに空気感染、飛沫感染によって広がり、水疱(すいほう:みずぶくれ)にもウイルスが存在するため、接触感染する場合もあります。潜伏期間は、感染から2週間程度といわれています。
水痘
1~5歳の小児に多くみられる病気でしたが、水痘ワクチンが定期接種になって以降は、小児の発症数は減少しています。一方で、成人例が増加していて(成人水痘)、小児よりも強い症状を起こすため注意が必要です。
発疹を生じる1、2日前から軽度の発熱、倦怠感、食欲不振などがみられます。典型的な経過では、発疹は紅斑(皮膚が赤くなること)から始まり、水疱、膿疱(のうほう:膿をもったみずぶくれ)を経て、痂皮化(かさぶたになること)していきます。さまざまな段階の発疹が混在するのが特徴で、これらすべてが痂皮になったときに治癒したとみなします。
成人例では、小児に比べて発熱、全身倦怠感などの症状が強く、肺炎などの合併症を起こすことがあります。また、妊婦が妊娠初期(8~20週目)に感染すると、約2%の胎児が先天性水痘症候群として低体重出生、四肢の形成不全、脳炎、小頭症、白内障などをきたします。
通常、予後は良好で7~10日で治癒します。そのため、全身状態が良好な場合には、自然治癒が期待できます。治療を行なう場合には、抗ウイルス薬(アシクロビルまたはバラシクロビル)を使用します。内服することで症状が緩和され、発疹が痂皮化していきます。発疹が出てから48時間以内に内服を開始するのが効果的です。
高熱があるときには、解熱薬を使用することもあります。ただし、小児ではアスピリンなどの解熱薬によりReye(ライ)症候群という重篤な副作用を生じて、急性脳症および肝機能障害をきたすことがあるため、注意が必要です。成人例では、発熱、倦怠感などの全身症状が強いため、入院して抗ウイルス薬の点滴投与を行なうことがあります。
患部は清潔にして、フェノール・亜鉛華リニメント(カチリ)や抗菌外用薬を塗布します。外用薬を塗布する際は、ウイルスが手指につかないように、指ではなく綿棒などを使いましょう。かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン剤などの内服を併用します。
発疹出現の1、2日前から痂皮化するまでは感染力があるため、原則としてすべての発疹が痂皮化するまでは登園・登校できません。ただし、ワクチンを接種しているときは、新しい発疹が出なくなれば登園できます。
軽度の発熱、不機嫌、食欲不振などがみられた後に、体中に小さな赤い発疹や水疱、膿疱が出現した場合は、水痘の可能性があります。周囲で水痘に感染した人がいなかったかどうか確認し、早めに皮膚科や小児科を受診しましょう。
水痘は感染力がとても強い病気であり、これを防ぐことができる唯一の予防手段は水痘ワクチンの接種です。2014年10月から水痘ワクチンが定期接種になっているので、きちんと接種を受けましょう。生後1~3歳までが対象で、生ワクチンを2回接種します。生ワクチンは毒性を弱めたウイルスで、これを接種することにより免疫を獲得します。水痘ワクチンは1回打つと重症化を、2回打つと発症を防ぐとされています。成人で水痘罹患歴やワクチン接種歴がない人、妊娠を希望する女性で免疫のない人などもワクチン接種を受けた方がよいでしょう。
水痘は一度感染すると免疫がつくため、基本的に2回以上かかることはありません。ただし、1回目が軽症であった場合には、抗体が少なく免疫がつかないことがあるため、再度水痘になる可能性があります。
解説:神﨑 美玲
水戸済生会総合病院
皮膚科主任部長
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