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2024.04.03
水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる帯状疱疹の症状が、目の周りに出る場合を「眼部帯状疱疹」といいます。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、最初に感染したときは水痘(水ぼうそう)として発症しますが、治った後もウイルスは体内の神経節に潜伏しています。疲労やストレス、病気、加齢などで免疫力が低下し、ウイルスが再活性化すると、神経に沿って皮膚に痛みを伴う発疹が出ます。
眼部帯状疱疹は、顔面の知覚をつかさどる三叉神経のうち、三叉神経第1枝(前頭部・上まぶた・鼻部)の領域に帯状疱疹を発症します。
頭痛や顔面の皮膚にピリピリした痛みなどの症状が現れ、その後に顔面の左右どちらか片側の前頭部・まぶた・鼻部に発疹が出ます。鼻部に発疹がある場合は「眼合併症」を起こす確率が高いとされ、注意が必要です。
「眼合併症」とは、結膜炎・角膜炎・強膜炎・虹彩毛様体炎・外眼筋麻痺など、目のさまざまな部分に炎症や障害が起こることで、まぶたの発疹、腫れのほか、眼球の充血、目の痛み、視力低下などの症状があります。
発疹ができている顔面の左右どちらか片側に目症状がある場合、眼科で細隙灯(さいげきとう)という拡大鏡を使用し、細長い光を目に当てて前眼部を見る「細隙灯顕微鏡検査」等を行ない、帯状疱疹の眼合併症を診断します。帯状疱疹による角膜障害では、角膜の表面にウイルスが感染し、異物感や眩しさを感じたり、涙目になったりする偽樹枝状角膜炎(ぎじゅしじょうかくまくえん)などがみられます。
まれに、眼部帯状疱疹でも発疹を伴わない場合があります。そのときは、PCR法によるウイルスDNA検出などのウイルス学的検査や、血清によるウイルス抗体価検査を行なうこともあります。眼合併症は皮膚の発疹のピークより遅れて出てくることも多いので注意が必要です。
通常の帯状疱疹と同様に、急性期には抗ウイルス薬の全身投与を中心に行ないます。皮膚科・眼科などと連携しながら、なるべく早期に治療を開始することが望ましいです。
眼局所の治療については、抗ウイルス薬の眼軟膏の点入(下まぶたの結膜嚢に指や綿棒で塗る方法)・塗布を行ない、病状によっては副腎皮質ステロイド薬の点眼を利用して炎症を改善します。虹彩毛様体炎などの場合は、眼圧上昇に対して緑内障治療点眼薬による眼圧コントロールが必要になることもあります。
また、目に異常がある場合は、発疹が消えた後も炎症の改善に時間がかかることが多いため、皮膚症状が改善しても治療が継続する場合もあります。
顔面・頭部の片側だけに違和感やピリピリした痛みが現れた後に、その部位に発疹が出てきたら帯状疱疹の可能性があります。治療が遅れると神経痛などの後遺症に影響する可能性がありますので、早めに皮膚科や眼科を受診してください。
帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)を発症したことのある人なら誰でもかかる可能性のある病気です。
帯状疱疹は加齢や疲労、ストレス、病気などで免疫力が低下し、ウイルスが再活性化することで発症します。そのため、予防には日頃の体調管理が重要です。栄養バランスのよい食事や睡眠をしっかり取り、適度な運動や休息でストレスを減らしながら、免疫力を低下させないよう心がけることが予防につながります。また、帯状疱疹を予防するためのワクチンもあるので、希望される場合はかかりつけ医にご相談ください。
解説:権田 恭広
神奈川県病院
眼科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。