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2018.08.02
眼全体を包んでいる「ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡体)」に何らかの原因で炎症が起こっている状態をいいます。
図:ぶどう膜
ぶどう膜炎にかかる原因は環境や人種などによって大きく異なりますが、日本人に多いとされるぶどう膜炎の原因には、サルコイドーシス、フォークト小柳原田病、ベーチェット病といった眼を中心に症状の出る病気のほか、強膜炎や急性前部ぶどう膜炎があります。また、細菌、帯状疱疹などのウイルス、カビ(真菌)、寄生虫などの感染や、糖尿病を原因としても発症することがあります。3分の1ぐらいの患者さんは、検査を受けても原因がはっきりしないと言われています。
ぶどう膜に炎症が起こると、炎症細胞が眼の中に出てきます。眼の中は光が通るように透明ですが、この部分に炎症細胞が出てくることで、ゴミや虫が飛んでいるように見えたり(飛蚊症)、霧がかって見えたり(霧視=むし)、光を眩しく感じたりします。炎症が強い時は、眼が充血します。そのほか、眼痛や頭痛を伴うことがあります。また、一般的に充血は感染やアレルギーなどによる結膜炎で起こりますが、ぶどう膜炎が原因の充血は、結膜炎と違って目やにが出ないのが特徴です。
眼の中に炎症が起こっている状態なので、それを抑える治療を行ないます。最も多く使われるのはステロイド薬です。強い作用があり、炎症の程度や場所によって、点眼、注射、内服などを使い分けます。また、免疫抑制薬や生物学的製剤などの特殊な治療薬を使用することもあります。感染が原因の場合は、抗生物質などそれぞれの病原に効く薬を使います。
症状が急に強く現れる場合もあれば、少しずつ強くなってくることもあります。飛蚊症や霧視、充血、眼痛、光を眩しく感じるなどの症状が続く場合は、早めに眼科を受診しましょう。また、眼の充血に対して、市販の目薬を使われる方もいると思いますが、目薬をしていてもなかなか充血が改善しない場合は、眼科できちんと診察をしてもらいましょう。
糖尿病で血糖値が高いときにも、ぶどう膜炎が発生することがあります。糖尿病の治療を受けていたが中断している、あるいは検診で糖尿病と言われていたが放置していた人で急に眼が充血しかすんできた場合、ぶどう膜炎が起こっていることがあります。すぐに眼科を受診するとともに、内科で糖尿病の治療を行なう必要があります。
ほかにも、さまざまな理由で免疫力が低下している状態の人は、感染によってぶどう膜炎が起こることがあります。例えば、AIDS、白血病、抗がん剤の治療中、臓器移植後の免疫抑制治療中などです。これらの患者さんは、眼の異常を感じたら早めに眼科を受診するようにしましょう。
ぶどう膜炎は発症の原因が不明の場合も多く、確実に予防することは困難です。ただし、寄生虫の感染によるぶどう膜炎は、生肉の摂取により発症することがあるため、生肉を食べることは避けた方が良いでしょう。
再発や悪化を防止するには、眼の症状が落ち着いてきたときに、自分の判断で薬の量を減らしたりやめたりせず、医師の指示通りに薬を使い続けて通院を怠らないことが重要です。ぶどう膜炎の治療は、眼の状態を見ながら薬の量を調整していく必要があり、長期にわたって薬を使用することがあるからです。また、季節の変化や精神的なストレス、寝不足、体調がすぐれないときなどにもぶどう膜炎が悪化することがあります。普段から睡眠、休息をしっかりとり、体調管理を心掛けるようにしましょう。
解説:中村 友子
富山県済生会高岡病院
眼科医長
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