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2017.03.08
アレルギー性結膜炎とは、眼の表面に花粉やハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が付着することで、結膜(まぶたの裏側から白目を覆っている薄い粘膜)に炎症をきたした状態です。アレルギーとは、特定の異物(アレルゲン)に対して免疫反応が過剰に起こることをいいます。具体的には結膜の表面に付着したアレルゲンが内部に取り込まれ、本来無害ではあるものの、異物であるアレルゲンに対して人のもつ免疫力によって免疫反応が起こり、眼の表面に炎症が惹起されます。
特に結膜は身体にとって外界と直接触れ合う部位であり、また涙液によってアレルゲンが溶けやすいため吸収されやすく、免疫反応を起こすたんぱく質や血管も豊富です。そのため、眼はアレルギーが起こりやすい臓器としてよく知られています。
眼の仕組み
症状は眼のかゆみが最も代表的ですが、その他にも充血や涙目、目やにが増える、眼に物が入っているように感じることなどがあげられます。更に悪化するとまぶたの裏側の腫れが強くなり、角膜(眼の表面で光が通過する無色透明な膜)とこすれて傷が付くことで、強い眼の痛みや視力障害をきたすこともあります。1年を通して症状がある通年性のアレルギー性結膜炎と、花粉の飛散時期などと一致して特定の季節のみに症状が現れる季節性アレルギー性結膜炎があり、花粉症によるアレルギー性結膜炎は全体の約85%を占めるという報告があります。
治療はアレルゲンの取り込みをおさえ、さらに局所でのアレルギー反応をおさえる抗アレルギー薬の点眼薬を基本としますが、症状が強く改善を認めない場合に免疫抑制作用の強い点眼薬や、炎症をおさえる力の強いステロイドを含む点眼薬を用いることもあります。
これまでに症状が無かった方でも、突然に花粉症等のアレルギー性疾患を発症することはよく知られており、特に眼のかゆみ等の症状のほかに鼻や喉の症状を合併するようであれば、アレルギー性疾患を念頭に置いて早期に眼科を受診することが大切です。
また花粉症といっても原因となる花粉はさまざまで、ほぼ1年を通して何らかの花粉は常に飛散しているため、花粉症の多い春先~夏以外の季節でも注意が必要です。帰省先や旅行先等のハウスダストで発症する場合もあり、普段と異なる環境下で症状が出現した場合にもアレルギー性疾患を疑い、早期に眼科を受診することをお勧めします。
眼科ではアレルギー性結膜炎に特徴的な所見を確認することで、眼のかゆみや充血をきたすその他の疾患と鑑別を行ないます。
アレルギー性結膜炎は、本来無害であるはずの花粉やハウスダスト等のアレルゲンに対して、身体が免疫応答反応を起こすことで発症します。一度身体がアレルゲンを攻撃対象と記憶して免疫反応を起こすようになってしまうと、その後同じアレルゲンに対しては常に免疫応答反応が起こるようになってしまうため、最初の免疫応答反応を起こさないことが予防に重要となってきます。特に花粉症等では、花粉の付着量が多くなることで発症するリスクが高まるため、特定の花粉が大量に飛散している時期や地域への外出を控えることが発症の予防につながります。
すでに発症してしまったアレルギー性結膜炎に対しては、まずアレルゲンへの暴露を最小限に留める必要があるため、同様に原因となる花粉の飛散量の多い時期や地域への外出を控えることや、花粉の入りにくい花粉症用のメガネを装用するなどの対策が重要です。
また、抗アレルギー点眼薬を発症の約1カ月前から開始することで、症状がピークとなる時期の症状を軽減する効果があるため、発症の時期が把握できている場合には発症前に余裕を持って眼科を受診し、点眼処方を受けることをお勧めします。
解説:立花 学
福井県済生会病院
眼科副医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。