済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
花粉の飛散時期の図
一般的に、花粉症の原因といえば春のスギやヒノキが広く知られていますが、一年を通して約60種類もの植物の花粉が飛来し、アレルギー症状を引き起こす原因となっています。秋に飛散ピークを迎えるのがブタクサ、ヨモギ、カナムグラなど。5~6月を中心に年中通して飛散しているのがカモガヤ、ハルガヤなどイネ科の植物です。春の花粉症を含め、既にアレルギー疾患を持っている人は、そうでない人に比べて秋の花粉症になりやすいといわれています。
いずれも大変身近な植物で、河川敷、道路脇、空き地、公園、自宅の庭などに多く生息しています。春に飛散するスギ、ヒノキなどの樹木と比べて背が低いため飛散距離は短く、数メートル~数十メートルほどとされています。しかし、草本に近づいた際に花粉を吸い込むとアレルギー症状を引き起こす原因となるので、日ごろから身近な植物の形をよく観察して、できるだけ近づかないよう注意が必要です。
これらの植物が雑草として自宅の庭に生えている場合は、できるだけ早く除去することが重要です。特にカナムグラは繁殖力が大変強く、駆除が難しいことで知られる植物。電柱などに絡みついて高い位置に葉をつけることもあります。
秋の花粉症の症状
秋の花粉は春の花粉と比べて粒子が小さいため、身体の内側まで侵入してくる特徴があります。気管支に入り込むと喘息のような症状を引き起こすことも。風邪との見分けがつきにくいので、長引くようであれば耳鼻咽喉科や内科の受診を検討しましょう。
鼻づまり、水様性の鼻汁、激しい目のかゆみ、目の周りや首などの皮膚に炎症が生じる「花粉皮膚炎」などの症状は、春の花粉症と共通しています。花粉症の治療薬や、症状軽減の基本的なポイントは、こちらの記事をご覧ください。
ダニアレルギー対策のポイント
秋は花粉症だけでなく、症状がよく似ていて流行時期も重なるダニアレルギーにも注意が必要です。ダニは夏の間に繁殖し、9月ごろから死骸となります。空気が乾燥する秋から冬にかけては、0.01mm以下の粉状になったダニの死骸や糞が空気中に舞い上がりやすく、吸い込むことで鼻炎や結膜炎、皮膚の炎症、喘息などのアレルギー症状を引き起こす原因となります。
対策として、アレルゲンであるダニを除去して清潔に保つことが挙げられます。定期的な換気や、カーペットの掃除機掛け、フローリングや家具などの拭き掃除、寝具やカーテンの洗濯・天日干しなどを徹底することで、手軽にダニ対策を行なえます。
花粉症とダニアレルギーは併発することもあり、自己診断は難しい場合が多いので、市販薬での改善がみられない場合はアレルゲン検査を検討しましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行が続く今、花粉症のケアや日ごろの体調管理にも例年以上の注意が必要です。厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第2.2版)」においても「初期症状はインフルエンザや感冒と似ており、この時期にこれらとCOVID-19を区別するのは困難である」と記されています。
医師でも症状からの診断が難しい、新型コロナウイルス感染症や花粉症、風邪などの症状。新型コロナ感染の隠れた兆候を見逃さないためにも、以下のポイントを意識しながら、不安な点がみられた場合は、医療機関の受診前に厚生労働省、各自治体、保健所が開設している電話相談窓口へ問い合わせましょう。
・目や鼻に触れる際は手指の洗浄、消毒を徹底する
・ハンカチ、ティッシュは清潔なものを使用する
・マスクは隙間なく顔にフィットしたものを選び、花粉の侵入やウイルスの飛散を防ぐ
・喘息やくしゃみの症状が出る場合は、マスクやハンカチでおさえる
・外出時は、専用のゴーグルや眼鏡、サングラスで花粉やウイルスの侵入を防ぐ
・つばの広めの帽子をかぶり、花粉やウイルスの髪への付着を防ぐ
・外出後は手洗い、うがい、衣類の洗濯を徹底し、室内への花粉、ウイルスの持ち込みを防ぐ
・市販のアレルギー薬を服用し、変化がみられなければ新型コロナ感染の可能性を疑う
・検温を行ない、日々の体調の変化に注意する
・レースのカーテンや換気扇を活用して花粉の侵入を防ぎながら、30分に一度程度室内の換気を行なう
2020年の春は、花粉症の患者さんが例年に比べて少ない結果となりました。この理由として、新型コロナウイルス感染対策のためにマスクの着用率が大きく上がった点が挙げられます。感染症、花粉症対策に有効なマスクを、この秋も効果的に取り入れていきましょう。
解説:小田 直治
鳥取県済生会境港総合病院
耳鼻咽喉科 部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。