済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2016.03.09
アレルギー性鼻炎とは、アレルギーが原因で起こる鼻粘膜の炎症のことで、「季節性アレルギー性鼻炎」と「通年性アレルギー性鼻炎」に分けられます。季節性アレルギー性鼻炎は、一般に「花粉症」として知られており、特定の季節に植物の花粉が原因で起こります。一方、通年性アレルギー性鼻炎は、ハウスダストが原因で起こり、年間を通して症状が出ます。ハウスダストとは室内のほこりのことで、ダニやカビ、動物の毛などが混ざっています。ハウスダストにアレルギーを持っている人は、スギやヒノキなどの花粉に対してもアレルギー反応を起こすことが多いといわれています。
アレルギー性鼻炎の特徴的な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。花粉症の場合は、それに加えて、眼の症状(かゆみ、涙目、結膜充血など)が出ることが一般的です。
アレルギー性鼻炎の原因と主な症状
アレルギーを引き起こす原因物質のことをアレルゲンといいます。例えば、スギ花粉症のアレルゲンはスギ花粉であり、通年性アレルギー性鼻炎のアレルゲンはハウスダストです。こうしたアレルゲンに一定期間触れ続けるうちに体内に入り、異物として認識されると、身体は異物を排除しようとして抗体をつくり始めます。この状態を「感作(かんさ)」といい、感作されると再び体内にアレルゲンが侵入したときに、身体が異物を排除しようとアレルギー反応を引き起こします。それがアレルギー性鼻炎の症状である、くしゃみや鼻水、鼻づまりなのです。
アレルギー性鼻炎の治療は、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド剤といった服薬や点鼻薬が一般的です。これらは症状を抑える対症療法であり、根本的に治すことはできませんが、こうした薬でしっかりと症状を抑えることができれば問題ありません。
アレルギー性鼻炎には、以下のような手術による治療法もあります。症状がつらい人は、一度医師と相談してみるといいでしょう。
1 レーザー焼灼(しょうしゃく)
レーザーで鼻の粘膜を焼き、アレルゲンに対して身体を鈍感にさせる手術です。この治療は、数年で正常な粘膜が再生され元に戻ります。2 後鼻神経切断術
鼻の骨の中には、後鼻神経という粘膜の染み出しやむくみをコントロールする神経があります。この神経を切断することで、血管がむくまないようにする手術です。アレルギー反応がなくなるわけではありませんが、鼻づまりと鼻水が減るので、症状が楽になります。永続的な効果が期待でき、再発率は少ないです。3 粘膜下下鼻甲介骨切除術(ねんまくかかびこうかいこつせつじょじゅつ)
鼻の中には、神経が通っている棚のようなものが3つあり、最も大きく鼻入口部に近いものの中にある骨を神経ごと抜き取って粘膜の張り出しを抑える手術です。鼻の通りがよくなり、鼻水も減ります。再発率は少なく、長期的な効果が得られます。
アレルギー性鼻炎の根治を目指す「アレルゲン免疫療法」という治療法があります。これは、アレルゲンを体内に少量ずつ取り込み慣れさせることで、過敏に反応しないようにする治療法です。アレルゲン免疫療法には、「皮下注射」と「舌下投与」の2つの方法があります。前者は、通院の必要があります。また、注射がショックを引き起こした例も報告されています。後者は、口の中にアレルゲンを含むという簡単な方法です。最初にしっかりと病院で指導を受ければ、自宅での投与・治療が可能です。ただし、この舌下投与は、現状スギ花粉とダニに対しての薬しかありません。
なお、どちらの方法も効果が出始めるのに数カ月かかるといわれており、長期間の継続的な治療が必要です。1年程度で治療を止めてしまうとすぐに元に戻ってしまうともいわれています。また、特定の季節に症状が出る季節性アレルギー性鼻炎の場合、症状の出ない季節には治療を怠ってしまう可能性も懸念されています。アレルゲン免疫療法を希望する場合は医師と相談し、メリットとデメリットを理解してから始めるようにしましょう。
アレルギー性鼻炎の予防には、原因物質であるアレルゲン(花粉やハウスダスト)になるべく触れないようにすることが大切です。
季節性アレルギー性鼻炎ならば、外出時にメガネやマスクを着け、外出後は衣類についた花粉を払い、室内に持ち込まないようにしましょう。一方、通年性アレルギー性鼻炎の場合は、基本的に一年中症状がありますが、特に掃除や物を動かす際に悪化する傾向にあります。そのため、ほこりに触れる可能性のある場合には、マスクを装着してハウスダストの吸入を防ぎましょう。また、こまめに部屋の掃除をし、室内のハウスダストを除去することも重要です。
上記のように、症状が出ないように予防策を講じることも大切ですが、アレルギー性鼻炎はアレルゲンに接触した頻度と量が問題になってきます。アレルギー性鼻炎を発症する前から原因物質や感作を助長するといわれるPM2.5などの公害物質を遠ざけ、発症年齢を少しでも後ろ倒しにしましょう。
マスクの正しい装着方法
マスクはアレルゲンの吸入予防に効果的な役割を果たしますが、正しく装着することが大切です。特に気を付けなければいけないのは、以下の2点です。
1 鼻の横がふさがっているか
2 あごの下まで覆われているかマスクを着けていても、鼻の横やあごの下に隙間があるとそこからアレルゲンが入ってきます。これは、アレルギー性鼻炎だけではなく、インフルエンザなどに対しても同様です。自分に合った適切な大きさのマスクを選び、しっかりと隙間をふさぐようにしましょう。
解説:小池 忍
京都府病院
耳鼻咽喉科
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。