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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2016.04.25
声帯ポリープは、風邪や声の出しすぎなどが原因で声帯に炎症が起こり、声帯の縁に小さい隆起ができる病気です。症状は声を出しにくい、声がかれるなどです。オペラ歌手のように普段から正しい発声の訓練をしている人よりも、教師や政治家など長時間話すことが仕事の人にできやすいといわれています。普段あまり声を使わない人が、運動会の応援などで大声を急に出した後にも生じます。
声帯は喉頭(いわゆる喉仏)の奥にある、左右一対のヒダ状の組織です。筋肉でできていて、その上にじん帯とさらにその上の柔らかい組織からなる粘膜固有層があります。表面は粘膜上皮に被われていて、炎症は主に柔らかい粘膜固有層で生じます。
声帯の位置
肺から空気が送り出され、筋肉の力で寄せられた声帯の間を空気が通り、気流で左右声帯の粘膜同士が吸い寄せられると、声帯粘膜が振動し声が出ます。声を出すためには、振動する粘膜層が重要なのです。
声帯ポリープを発症した場合は、声を出さずに安静にしていることが大切です。治療が必要であれば、消炎鎮痛剤を使ったり、吸入のステロイドを使ったりします。通常であれば、こうした薬によって炎症は数カ月程度で引きます。炎症が治まらない場合には、全身麻酔で手術をします。直達鏡(ちょくたつきょう)という器具を使い、口からポリープを切除して摘出します。喉を切開する必要はありません。
鼻や口からカメラを入れて鉗子(かんし)で摘出する方法もありますが、正確性の点で直達鏡に劣ります。なぜなら、ポリープのみをピンポイントに摘出することが難しく、場合によっては声が元に戻らないことがあるからです。ポリープを摘出する際に、粘膜固有層の浅い部分を一緒に摘出してじん帯を露出させてしまうと、声帯の隙間に空気が通っても、声帯が振動しないため声が出にくくなるのです。これを瘢痕化(はんこんか)といい、一度起こってしまうと、現在の技術では改善が困難なので、直達鏡を使った安全性の高い手術をすすめています。
「医学解説」で述べたように、声帯ポリープは、声帯の炎症をきっかけにポリープができる病気です。ポリープができ始めたときから、声を出しにくい、声がかれるなどの症状がみられます。症状を自覚したら、声帯ポリープを疑い、放置しないようにしましょう。通常は、声がかれた場合でも、大きな声を出さずに約2週間安静にしていれば元に戻ります。ただ、喫煙者には、別の危険性があります。喫煙は喉頭がんの発生リスクを高めることで知られていますが、喉頭がんの初期症状は声がかれることです。喫煙者で、声を出しにくい状態が2週間以上続くようならば、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
声帯ポリープを予防するためには、声が出ないときに無理に出そうとしないことが大切です。声を出しにくいということは、すでに声帯に炎症が起きているということです。無理をすると炎症がポリープに進展してしまいますので、声が出ないときはなるべく安静に過ごしましょう。
また、声帯の粘膜にとって乾燥がよくないということも知られています。例えば、講義をしたり会社でプレゼンをしたりと、長時間声を発し続ける際に喉が乾燥し、炎症が起こりやすい傾向があります。途中で休憩して水分をとるように意識しましょう。また、温かい飲み物を飲んだり、蒸気を吸い込んだりして、喉を加湿することも予防につながります。
解説:小池 忍
京都府病院
耳鼻咽喉科
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